ESG・SDGsと企業経営

ESG・SDGsの経営 金融サービスと製造業を並べて評価するのは公平か

 SDGsやESGを評価基準にした企業経営の調査が増えています。地球環境問題は世界的な関心事だけに、調査の実施主体は大手会計事務所やシンクタンクにとどまらず、新聞や経済誌などさまざま。幅広い層からの反響が大きい証です。ESGなどをテーマに設計した投資商品もどんどん増えています。投資効率の良さを重視した営業トークも目立ち、本来の趣旨から見たら違和感があります。また、若い層が入社先を選ぶ基準として重視する傾向が広がり、就活対応でSDGsを掲げる会社も。もはや企業の経営理念から外すことができないキーワードです。

もはや企業経営は最大利潤の追求ではない

 企業経営の最大の眼目は何か。かつては最大利潤の追求という一言で済んだのですが、1990年代に入って利益だけを語っていては落第です。社会貢献、地球環境問題などに寄与できる企業経営を心掛けなけらばいけません。本音はやはり利益の拡大ですが、嫌な言葉ですが表看板には掲げる経営理念の一つになりました。

 ここ10年は、もう表看板に掲げているだけでは企業存続が怪しくなってきました。どこまで本気で実践しているか。株主総会で問われるのが今や当たり前の出来事です。だからこそ、目先の企業業績よりも近未来への地球貢献度を尺度にした企業評価調査が注目を浴びています。地球温暖化を招くCO2や廃棄物の削減、リサイクルは大きな経営課題として浮上しています。

 世界の優良企業は環境対策の成否で企業価値と換算されてきました。ところが日本企業の環境経営は世界から取り残されています。メディアで再三、報道される調査を見ていると、上位を占める顔ぶれはこの20年間以上大きく変わりません。残念ですが、高い評価を得た企業の価値を高めるよりは、日本のカーボンニュートラルの取り組みの力不足が浮き彫りになっているようです。

もちろん、原因は調査の手法に由来します。調査の客観性を厳密に問うと、財務指標など数値で評価しがちです。そうなれば、優良企業ほど企業の評価ランキングは上位を占めることになります。

 しかも、株式市場に上場する企業にとって、株主の評価が環境を視点に見定めらる傾向が定着していますから、なおさら数値上は改善している環境対策の成果を有価証券報告書に表記します。多くの人員と労力、改善する変化率を見栄え良く示す余力は大企業ほどあります。大企業が優位になります。

大企業ほど評価が高くなる癖も

 企業経営の癖と例えれば失礼ですが、環境経営の実現に向けてチャレンジする姿勢は総合的に実践できる大企業がブランドやSDGs関連の評価で高くなってしまう傾向があります。

 ただ、地球環境に関与する経営は産業によって大きな差異があるのも事実です。CO2の削減だけに焦点を当てれば製造業は排出量が多いだけに、削減努力に比べて削減した変化率が低くなりがちです。これに対し製造業以外のサービス業、とりわけ金融や小売は注力する経営資源が製造業に比べて限られていますから、削減効果は顕著に現れる傾向が強いです。

 ある雑誌の調査でも従業員一人が排出するCO2の量を大きく削減した企業として金融サービスがトップを占めていましたが、CO2を排出する事業内容は製造業とあまりにも違い過ぎます。

 しかも、ESGやSDGsに関する経営指標が経営の優劣に反映して、投資先の”格付け”にも影響が与えるなら、なおさらです。金融機関は投資・運用、自らの格付けに敏感ですし、経営の根幹です。製造業に比べて経営指標を高く評価されるよう努力するのは当たり前ですし、製造業などに比べて改善しやすい経営体質です。金融サービスの会社はその評価をてこに自らを投資先としての評価を高めるとともに、投資資金を集めます。鉄鋼会社が環境に関する経営指標を改善する意味合いと大きくことなりますし、事業に与えるインパクトも違います。

全産業で比べるのは無理?

 環境経営に関する調査をみていると、産業ごとに経営指標を区別して評価しているものもありますし、全産業という括りでランキング評価しているものもあります。産業別の違いに神経を使っていれば、結局は個別企業の比較検証ができないという思いがあるのもわかります。しかし、企業の環境に対する取り組み、改善する総合力を評価したいという視点から、金融サービスも製造業も一括りでランキングしてしまうのはやはり無理があります。

環境に関する経営調査は発展途上

 こうした問題点を改善するため、精緻な調査項目を設定して数値化する手法が増えています。しかし、評価の過程が複雑になってしまい、傍目からはとてもわかりにくい調査手法になります。多くの人により正確な調査結果を伝えたいという思いが裏目に出てしまいます。ESGやSDGsに関する調査はまだまだ試行錯誤の途上にあることを承知して、冷静に調査結果を幹割る姿勢がまだまだ求められます。

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