ESG・SDGsと企業経営

ヤマダとエディオンが経営統合、家電量販の宿痾「下請けいじめ」は止まらない

 ヤマダホールディングスとエディオンが経営統合します。家電量販はこれまでも激しい価格競争を繰り広げていますが、アマゾンなどネット販売、ニトリやアイリスオオヤマの家具大手が加わり、企業体力の消耗戦に突入しています。ヤマダとエディオンは売上高で第1位と第4位、店舗数で第1位と第3位ですから、両社の経営統合は家電量販のトップの座を固める最強の選択といえます。

経営統合は自縄自縛の始まり

 視点を変えて冷静に眺めると、自ら窮地に追い込む可能性を見落とすわけにはいきません。家電量販の宿痾ともいえる「下請けいじめ」の罠がさらに自縄自縛を招くからです。

 家電量販のビジネスモデルの根源はいかに仕入れ値を下げるかにあります。家電メーカーから大量に仕入れる代わりに仕入れ値をライバルよりも低い価格に押し下げ、低ければ低いほどライバルとの価格競争で優位に立ちます。安さに釣られて店舗を訪れる客足が増えれば、たとえ低い利幅の製品でも大量に販売できれば収益の数字は押し上がる、という構図です。

 勝負の分かれ目は仕入れ値を下げること。売上高や店舗数が多いほど家電製品を仕入れる量が増えるわけですから、勝利の方程式は経営統合、あるいは資本提携による規模拡大。資本力の力勝負が決め手です。

量販店は経営統合、提携の繰り返し

 1980年代から始まった家電量販の歴史を振り返ってください。ヨドバシカメラ、ビックカメラなど東京を地盤にした大手が勢力を広めましたが、ヤマダ、コジマ、ケーズデンキなど北関東出身の家電量販が全国制覇に向けて急速に店舗数を増やし、地方の有力都市に出店し、地元の量販店を次々と飲み込んでいきます。

 現在の家電量販業界の上位5社はヤマダ、ノジマ、ビックカメラ、エディオン、ケーズデンキの順。ヤマダは福岡県のベスト電器、ビックカメラはコジマ、エディオンは石丸電気など飲み込み、駆け上がってきました。

 もっとも、大量仕入れを背景に仕入れ値を下げようとしても、納入する家電メーカーは自ら利益を損失してまで下げるわけにいきません。とりわけ、量販店のプライベートブランドを生産する中堅メーカーは、大手に比べて体力が劣っています。値下げ幅に自ずと限界があります。

 しかし、負けるわけにはいきません。大手量販店はライバルより割安に製品を仕入れるため、納入業者に対しより厳しい取引条件を提示し、優位的な立場を利用して認めさせます。赤字覚悟の納入を迫り、いつか利益を還元すると抗弁します。いわゆる「下請けいじめ」が消費者の目に触れない陰で繰り返されます。

公取委、中企庁の警鐘が鳴るが・・

 例えばヤマダ。2008年6月、公正取引委員会から独占禁止法19条に違反する行為があったとして 排除命令を受けました。必要な費用を負担しないまま、納入業者から延べ約17万人を不正に派遣させていました。独禁法違反を認定した従業員の派遣数としては過去最大だそうです。必要な費用を負担せずに商品の陳列などをさせたほか、展示用商品や返品されたものを「展示処分品」として販売現場で作業をさせていました。かなり悪質です。

 独禁法の怖さを身をもって体感したでしょうから、厳守を徹底させていると思いますが、現実はどうでしょうか。公取委が警鐘を鳴らしているにもかかわらず、その後もヤマダと競うヨドバシカメラ、ビックカメラが摘発され、連鎖は止まりません。

 エディオンはどうでしょう?2024年8月、中小企業庁が公表した「下請けいじめ」調査でタマホーム、一条工務店と並んで最低評価を下されています。エディオンはプライベートブランドの拡大、購入後の修理などアフターケアの充実などで価格競争からの脱却を急いでいますが、結局は納入業者からの仕入れ値をさらに削り、販売価格を下げるしかない窮地に立っている証拠です。

 ヤマダの山田昇会長は「スケールメリットを追求し、家電小売りを超えた価値を創造する」、エディオンの久保氏会長は「プライベートブランドの研究開発が経営統合によって一層進む。新たな価値創造を追求する取り組みをしていきたい」と新たな収益戦略の加速を強調していますが、結局は目の前の危機突破は規模拡大しかないと決断しました。

 家電量販の競争は、量販店、ネット、異業種参入の三つ巴になって過熱しています。今後も量販店が最後の切り札として納入業者に仕入れ値や人件費などで不正な取引条件を求める「下請けいじめ」を選択する可能性は十分にあります。宿痾は完治する見込みはあるのでしょうか。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


最近の記事
Eco*Ten
  1. 森林ファンドの光と影 投資の実効性と企業のグリーンウォッシュシングにどう答えるか

  2. 収益か信用か 生保の企業倫理が問い直しされる

  3. プルデンシャル生命 強欲に自縛した企業DNAを改革できるか

  4. 金融庁がソニー生命に立入検査 生命保険会社はどう信頼を回復するのか 

  5. プルデンシャル生命 安心を売るのか、顧客を売るのか 月給30万円保証で信用は買えない

  6. 北海道でブリ豊漁、でも道民と私はブリ食べない、地球温暖化に対応するのはたいへん

  7. ヤマダとエディオンが経営統合、家電量販の宿痾「下請けいじめ」は止まらない

  8. 前田建設が八代市庁舎で談合 コンプラ叫んでも「ゼネコンのDNA」は一掃できず 

  9. 「顧客から金銭詐取、情報の無断持ち出し」は保険の常識 「誰も騙しません」と明記して

  10. 環境経営度 by AI ⑥ 日本製鉄 脱炭素に向けて「先行逃げ切り」と評価

  1. ダボス会議 悲喜劇の舞台に形骸化、そろそろ賞味期限切れが迫っている

  2. Eco*ユニコーン創生 株式上場益の2倍相当を無利子で10年融資、脱炭素のブレイクスルーへ

  3. JFE 高炉から電炉へ 脱炭素の覚悟 過去の栄光と葛藤の末に Eco*Ten 6・5点

  4. 日揮 スシローなどとSAF生産、ESG・SDGsが背中を押した驚きの提携

  5. 経産省が国交省を行政指導する日は近い?! 企業の人権侵害の手引き公表

  6. キーエンス Eco*Ten は10点満点の6・5点 環境は身の丈に合わせて努力

  7. 気候変動ランキング① CCPI 日本は59ケ国+EUのうち50位 政策の具体性と実現に低い評価

  8. ESGと経営戦略①マクセル が全固体電池の先駆に エネルギーのスマホ化を加速

  9. 政府、原発推進へ大転換 及び腰から本腰へ 本気度をEco*Ten 10点満点の3・5点

  10. ディスコ Eco*Ten 10満点の8・0点 SDGsの総花的な贅肉を削ぎ、強い分野をより研磨する

カテゴリー

明治神宮外苑から信濃町へ

TOP