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Eco*ユニコーン創生 株式上場益の2倍相当を無利子で10年融資、脱炭素のブレイクスルーへ

 ユニコーンは寓話の世界で額中央に一本の角を持つ馬に似た獣として登場します。経済の世界では将来性豊かなベンチャー企業の別名として使われていますが、日本ではそんなに馴染み深い言葉ではありません。あまり登場しませんから。米国メジャーリーグの「大谷翔平」みたいな存在ですね。誰もが憧れ、不可能と信じられていた夢を叶える力を持っています。

日本から世界のユニコーンは誕生しないのか

 ユニコーン企業とはどんなものか。巷間いわれるのは、事業の将来性を期待されて株式上場すれば日本円で1000億円以上の価値を生み出すベンチャー企業を指します。

 直近の例でみると、メルカリですか。ネット上のフリーマーケットを事業化し、大成功しました。創業者の山田進太郎さんが世界一周の旅の途中、「限りある資源を循環させ、より豊かな社会をつくりたい」との思いを抱いたのがきっかけだそうです。誰も簡単に参加できるフリーマーケットをネット上で創設し、捨てられるモノを再び使えるモノに切り替える。「捨てる神あれば、拾う神あり」。当たり前のように思われたことをネット上に再現しました。最近、ちょっと勢いを失っているかもですが、それもユニコーン。

 2013年に創業し、5年後の2018年に株式を上場。当初、時価総額は4000億円相当とみられていましたが、高い人気を反映して7000億円超まで膨らみました。山田さんの個人保有株式は全体の3割弱だったので、個人資産は軽く1000億円を超えました。個人の生涯年収は大学卒で3億円弱だそうですから、333年分に相当します。唯一無二のユニコーンにふさわしい迫力ある数字です。

 ところが、日本のユニコーンはメルカリのほかに片手で数えられるかどうか。人工知能によるディープラーニングなどで最先端を走るプリファード・ネットワークスは断トツの有望株ですが、その後に続く企業がユニコーンにふさわしいのか疑問です。

「世界を変えたい」とのセリフが日本でも

 米国シリコーンバレーを訪れた時、起業家をめざす米国学生のセリフが忘れられません。「世界を変えたい」。どんな世界に変えたいのかはともかく、自ら世界の枠組みを創造する気持ちに驚きましたし、いわゆるGAFAに続く起業家の裾野の広さを知りました。

 日本でも半導体やソフトなど今後も期待される分野で数多くの起業家が挑戦しています。残念なのは、期待される企業の多くは従来のビジネスモデルや技術をこねくり回した小手先のスタートアップが占めます。スタートアップそのものが株式などの金融市場で流行語として広がっていることもあって、一攫千金を狙う起業家を次々と登場します。旧態依然の昭和の会社がまだ大半を占める東証などの活性化からみれば、新陳代謝を促す役割も加わり大歓迎されるのはわかります。

  米国の若者の言葉を借用するわけではありませんが、日本から「世界を変える」ユニコーンを期待したい。それも世界中が直面する気候変動へのブレイクスルーを提示するビジネスモデルを。

 日本から世界が刮目するユニコーンを創り出すためには何が求められるのか。日本は周囲を見渡して異論のない行動するのが賢いと評価される社会です。一言で表現すれば「間違わない」でしょうか。「自分勝手は許されない」「一人だけ目立つのは・・・」。社会の常識です

非常識は承知の上、ユニコーン税制を創設

 日本の常識を一度、捨ててみませんか。例えば、ユニコーン税制の創設。ユニコーンに変身できると自信を持つ会社は株式上場しても巨額の上場益を手にせず、その代わり国が上場益を基に算出した2倍の金額を無利子で少なくとも10年間は供給するのです。もちろん返済は不要です。上場によって手に入る利益は国庫へ納入します。メルカリの場合で仮に考えたら、1兆円程度の資金を手にすることができるかもしれません。

 ユニコーン税制を選ぶかどうかは会社の判断に任せます。経営の自主性は重んじます。株式の保有は従来通り。NTTや日本郵政のように国は保有しません。ということは経営に国は関与できません。ただ、国はユニコーン育成を応援するために経済・産業政策を改革することを義務付けます。

中小企業にも新たな可能性を

 なんとも非常識なユニコーン税制から何が期待できるか。まず突拍子もないことを考え、事業化する経営者を楽しむ社会の実現です。おもしろいことをおもしろいと思える世界は好きです。しかも、元手となる資金はユニコーン企業の可能性です。この資金をてこに、腰を据えて長期的な経営の視点に立って投資や研究開発が実行できるうえ、国の政策的な支援と信用力の恩恵を背に海外の銀行や投資家から資金調達し、世界戦略を加速できます。新たな政策は当然、ユニコーンの対象外となる中堅・中小企業の経営支援として活かされます。

挑戦に失敗も損もないのですから

 挑戦してみて損はないはず。大谷翔平が米国の大リーグへ移り、二刀流を実践しようとしたとき、確信した人間はほとんどいなかったのですから。

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