ESG・SDGsと企業経営

森永乳業 初めてグリーンボンドを発行 企業姿勢を対外的に説明する手段にも

 森永乳業が初めてグリーンボンドと呼ばれる社債を発行すると発表しました。「サステナビリティ中長期計画 2030」を作成し、今期の2023 年 3 月期をサステナ ビリティ経営の実現を目指すスタートラインの年と設定しています。計画の柱は「食と健康」「資源と 環境」「人と社会」の 3 つ。初のグリーンボンドで調達した資金で地球環境保護を加速するわけですが、乳製品など食品の名門であり、産業を率先する企業としてはちょっとスタードダッシュが遅い気がします。

グリーンボンドの使途は地球温暖化や環境保全など

 グリーンボンドは、企業や地方自治体などが地球温暖化や環境保全などの対策に投じる資金を調達するために発行する債券です。使途は環境関連に限られ、調達した資金の実行状況は発行主体が説明する義務を負い、調達目的が確実に実践されているかどうかが検証されます。森永乳業はグリーンボンドを発行するため、国際的な認証制度や中立的な立場の格付け機関の審査を受けています。

 森永乳業のグリーンボンドは①気候変動の緩和と適応②環境配慮と資源循環③持続可能な原材料の調達の3つを主眼において、具体的な施策を実行します。同社の発表文では7項目を記載しています。

1 酪農・畜産におけるふん尿処理・バイオガス発電システム「MO-ラグーン for Dairy」の設備投資

2 グリーン電力証書購入

3 自社の事業活動で使用するアイスバンク(冷却水システム、 冷凍機など)のエネルギー効率が平均 30%以上改善する機器の 導入・更新

4 フロンガスHCFC冷媒(R22等)利用の冷凍設備更新

5 水質保全に資する排水処理設備の能力増強投資

6 容器製造機器の導入(プラスチック容器の軽量化)

7 容器包装に使用するFSC®認証紙の購入費用

 環境いずれも環境対策の代表的な施策ばかりです。リーダー的な企業が実践することは食品産業の中堅・中小の裾野まで広がり、低い食料自給率や大量の食品ロス、プラスチック製品のリサイクルなどの課題解決に向けて大きな力を発揮します。大歓迎です。

長野県の味噌メーカーも発行

 ただ、森永乳業です。多くの消費者にとても身近で知られている企業だけに、もっと早く先駆的な企業として手を挙げてもよかったのではないかと思います。グリーンボンドは日本で2014年に初めて発行され、すでに8年間過ぎました。2020年のグリーンボンドの発行実績は同年12月時点で76件。金額は1兆円を超え、件数、金額とも急増しています。

 食品ではキリンやアサヒビールが先行しており、中堅・中小では長野県下諏訪町のひかり味噌が2022年9月に発行しています。資金調達は3・5億円と他の事例に比べれば小規模ですが、売上高167億円(2021年9月期)を考えたらとても意欲的です。同社の企業メッセージは「自然の恵み、いただきます」。

 森永乳業はなにかと明治乳業と比較されますが、持ち株会社の明治ホールディングスは2021年4月に環境保護を目途したサスティナビリティボンドを発行しています。

企業の姿勢をどう表現するか

 ESGやSDGs関連のファイナンスはブームのように広がっています。企業イメージ向上のために実施するのは論外ですが、食品事業は消費者、環境などと身近に深く関係しています。森永乳業のグリーンボンドの発行を通じて企業の取り組み姿勢が浮き彫りになることを改めて痛感します。

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