CCPIの気候変動ランキングの最後は「政策力」です。日本は55位。59か国+欧州連合(EU)の60が対象の中でも55位。CCPIは「非常に高い」と評価される最上位3か国、1位から3位までは対象国無しという評価を下し空欄となっていますから、実質52位。
G7メンバーで唯一最下位グループ
しかも、「非常に低い」と評価される最下位グループ11か国のうちG7メンバーで唯一のランク入り。最下位の63位はウクライナに侵攻したロシア、気候変動政策の真逆を展開していたブラジルが60位となっており、日本が最下位グループに入る評価は、非常に厳しい目で見られている証拠です。
政策力の評価基準は2項目。現在の国家政策と国際公約した政策のパフォーマンス。自国の政策は「低い」、国際公約は「非常に低い」。非常に低いは、ロシア、トルコ、ブラジル、ベラルーシ、ポーランドなど中央アジアと東欧圏の国ばかり。アジア圏はマレーシアと日本だけ。
米国、カナダはランクアップ
注目したいのは米国の10位、カナダの33位。CO2排出量の削減、再生可能エネルギーの導入、エネルギーの使用効率いずれも最下位グループにランク入りしていた米国とカナダが日本を置き去りにしてランクアップしています。実行力に対する評価は低いものの、国家として取り組む姿勢は一転、期待されているようです。
日本は具体的な計画と実行力が欠落
CCPIの日本に対する評価です。日本は政策面で進展がみられるが、ゴールに向かう具体的な計画が欠落している。石炭火力、炭素税、再生可能エネルギーの加速などで不十分とみています。G7メンバーで唯一、最下位グループに残っている理由としてG7が電力や交通・運輸で脱炭素化を進めるために議論する中で、日本がその議論を阻止しているとみています。国家政策としての気候変動対策も同様に、改善がみられないと結論しています。自動車産業がガソリンエンジン保持にこだわり、電気自動車の普及が遅れていることも見逃すわけにはいきません。
日本政府は11月29日、GX(グリーン・トランスフォーメーション)実行会議を開き、経産省から脱炭素を進める切り札として排出権取引、炭素税、企業への賦課金の3制度を提示しました。今後10年間で150兆円以上の投資を進める考えを示し、このうち20兆円はGX債を発行して調達して資金を回します。債券返済の資金として排出権取引と企業への賦課金を軸に考え、炭素税については経団連の反対姿勢もあって消極的です。道筋は整えていますが、脱炭素の実効性がいよいよ試されます。
グリーン成長戦略の点検は?
2020年12月、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた「グリーン成長戦略」を公表し、国家戦略として進める姿勢をアピールしました。その後、コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻など予想外の事態が相次いだとはいえ、グリーン成長戦略の進捗度が再点検、議論されているフシがありません。
一方で原子力発電を脱炭素時代の主要電源としての位置付けを変えずにいるため、結果的に再生可能エネルギーや制度面からの脱炭素化が出遅れ、国際的に取り残された印象を強くしています。
原発を主電源に据えたままで良いのか
福島第一原発事故の被害などを後世に伝える福島県双葉町の「東日本大震災・原子力被害伝承館」を訪ねてみてください。双葉町の目抜き通りに掲げられた看板「原子力は明るい未来のエネルギー」が被害当時のまま屋外展示され、そのすぐ横には津波で押しつぶされた消防車が置かれています。全町避難など大きな苦しみを味わった原発立地の自治体のみなさんの思いが表れています。
CCPIの気候変動ランキングは一つの目安です。一喜一憂することはありません。しかし、地球温暖化は着実に進むなかで、国際公約として掲げた政策が足踏みしている国として日本が評価されることは、今後の政策展開でも手足を縛る結果になりかねません。改めて、世界の視線を感じて政策実行する覚悟が問われています。
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