Eco*Ten

気候変動ランキング⑤エネルギー利用の効率 日本は33位 優れた省エネは過去の栄光 2030年に向けて努力を

 CCPIの気候変動ランキングを評価する項目の3番目はエネルギー利用の効率。日本は33位。「中位」のグループに入っています。総合ランキングが50位ですから、エネルギー利用の効率は高く評価されています。

 エネルギー利用の効率で1位はコロンビア、2位はエジプト、3位がフィリピン。効率が高いと評価されている上位17位のなか、先進国でランキング入りしたの英国だけ。総合1位のデンマークは26位、再生可能エネルギーで1位だったノルウェイはなんと52位。このカテゴリーをみていると、気候変動対策への考え方が日本と海外で異なることがわかります。

 日本の場合、環境対策といえば省エネがまず思い浮かびます。1970年代の石油ショックで経済活動が大打撃を受け、なにはなくても、まずは石油の消費量を減らす省エネに邁進した後遺症といえるかもしれません。

 これに対し海外の気候変動対策をみていると、まずはCO2の排出量を削減することが最優先。水資源に恵まれたノルウェイが再生可能エネルギーのほとんどを水力で稼ぎ出している一方で、エネルギーの使用効率は最下位グループに止まります。水力発電で得た豊富な電力なら多少無駄が生じても温暖化対策に影響はない。だからこそ、同国でテスラなど電気自動車の普及が新車市場の50%を超えても、電気代が高いなどという苦情が出てこないのでしょう。

 「効率が非常に低い」と評価された最下位グループをみると、この傾向は顕著に現れます。北欧ではスウェーデンが51位、フィンランドが61位で名を連ね、資源大国のロシア、米国、オーストラリア、中国、イラン、サウジアラビア、カナダもグループ入りしています。「金持ち喧嘩せず」とよく言われますが、資源、エネルギーが豊富にあると省エネの徹底度に大きな差が現れるとランキングは語っています。

 日本のランキングをもう少し詳しくみてみます。エネルギーの使用効率は全体評価100%のうち20%を占めており、さらに4つの細目で評点しています。①直近の人口あたりエネルギー利用率の傾向②過去の傾向③マイナス2度達成に向けた取り組み④2030年に向けた達成度で、それぞれ5%ずつ配点されています。

 日本は過去の使用効率で「高い」と評価されていますが、直近の傾向、マイナス2度への取り組み、2030年に向けた達成度ではいずれも「低い」とされています。日本は世界各国に比べて省エネ技術が優れ、産業や日常生活でも省エネが徹底されていると自画自賛しがちです。CCPIの気候変動ランキングをみていると、もう過去の栄光に過ぎないのだと肩をたたかれて、慰められているような気がします。

 仕切り直ししましょう。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


最近の記事
Eco*Ten
  1. 環境経営の虚と実② EV支援策が消えた米国 蛇行するテスラはそれでも飛翔する

  2. 環境経営の嘘と実 ① 政府と企業の狭間を奔走するEV

  3. 損保ジャパン、個人情報の漏洩が止まらない 地に落ちた信用をどう回復するのか

  4. 日本生命 銀行情報を無断持ち出し 信用という保険を自ら貶め、捨てる

  5. 伊藤忠が女性活躍推進のオレンジボンド 三菱、三井と並ぶ年収引き上げなど、岡藤会長の人心掌握術に敬服

  6. 下請けいじめが大幅改善 中小企業庁、公取委の二人三脚が大成功!

  7. 国際司法裁判所 気候変動対策の義務を勧告 後退りする世界へ警告

  8. HSBC 脱炭素の国際枠組みから脱退 金融の真骨頂が付和雷同、右往左往とは情けない

  9. 企業のサステナ情報開示の義務化を徹底して、足踏みする欧米に追いつき、追い越すチャンスに

  10. 公取委 ロピアに立入検査 商習慣と「下請けいじめ」を勘違いする流通業

  1. Eco*ユニコーン創生 株式上場益の2倍相当を無利子で10年融資、脱炭素のブレイクスルーへ

  2. 日揮 スシローなどとSAF生産、ESG・SDGsが背中を押した驚きの提携

  3. キーエンス Eco*Ten は10点満点の6・5点 環境は身の丈に合わせて努力

  4. 経産省が国交省を行政指導する日は近い?! 企業の人権侵害の手引き公表

  5. 政府、原発推進へ大転換 及び腰から本腰へ 本気度をEco*Ten 10点満点の3・5点

  6. 気候変動ランキング① CCPI 日本は59ケ国+EUのうち50位 政策の具体性と実現に低い評価

  7. スズキEco*Ten(上)伸び代はいっぱいですが、実行と成果はこれから

  8. ESGと経営戦略①マクセル が全固体電池の先駆に エネルギーのスマホ化を加速

  9. JFE 高炉から電炉へ 脱炭素の覚悟 過去の栄光と葛藤の末に Eco*Ten 6・5点

  10. ディスコ Eco*Ten 10満点の8・0点 SDGsの総花的な贅肉を削ぎ、強い分野をより研磨する

カテゴリー

明治神宮外苑から信濃町へ

TOP