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日本郵船 Eco*Ten6・7点 ESGで経営改造 成否は大胆な燃料転換の実効力

 日本郵船が新しい中期経営計画を発表しました。表題に「Sail Green」と銘打っているぐらいですから、経営改革の軸としてESGを据え、かなり本気かなと思い、Eco*Tenすることにしました。

 日本郵船は、三菱財閥発祥の企業の一つ。明治から日本の株式会社の経営を描く道筋を先導し、海運会社として国際化でも先駆けてきました。令和の日本企業はESG、SDGsを唱い、経営戦略の柱に据付けます。

 しかも、海運会社は航空会社同様、大量輸送が宿命。船舶や港湾業務などでCO2を大量排出せざるをえない産業です。日本郵船なら、どういう未来図を描き、カーボンニュートラルを軸に具体的な改革を実行するのか。期待しました。

 結論はちょっとがっかり。経営計画のもう一つの柱である資本政策でも、驚きの度合いが低かったせいか株式市場もガッカリしたようで、株価に新たな勢いが感じられません。

 中期経営計画の概略は以下のアドレスから参照ください。

中期経営計画「Sail Green,Drive Transformations 2026- A Passion for Planetary Wellbeing」 https://www.nyk.com/ir/pdf/sa2022.pdf

 

 中期経営計画は、2030年をターゲットに設定したビジョン「総合物流企業の枠を超え、中核事業の 深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」に従い、2026年度までの4年間の行動計画として位置付け、ESGを中核に据えました。

 目玉は事業を「深化」と「進化」させるというちょっと言葉遊びしながら、ともに思い切った投資や挑戦をめざす「両利きの経営」と掲げていることです。残念ながら、何度も経営計画を読みましたがその意図がわかりません。「もっと素直に経営計画を表現すれば良かったのに」という思いが消えず、せっかく新戦略が頭の中に入ってきません。

 そこでEco*Tenに直結し、海運会社として最も難しいテーマである船舶の燃料転換に焦点を定めて、評点することにしました。

Eco*Tenは10点満点。5項目で構成、各2点満点。

①透視する力;近未来をどう捉え、どのような対応が求められ、実行していかなければいけないか。見透す能力を評価します。1・8点

 日本郵船は東京大学や商船三井、川崎汽船などと2009年からから巨大な帆を使って大型貨物船の推進力を得るプロジェクトに取り組んでいます。風力次第ですが、燃費を30%程度カットできることがわかっています。このほかにもユニークな実験に手を広げ、従来の常識に囚われずに果敢に挑む姿勢は高い評価を集めていましました。

 化石燃料を削減する代わりに風力など自然エネルギーを活用するカーボンニュートラルの発想は当然ありましたが、燃費削減の方が至上命題だったと思います。海運会社のビジネスはタンカー、バルク、コンテナ船の運賃市況に左右されるため、試行錯誤を重ねながら収益の安定策を探っていました。

 現在は世界の混乱する情勢を反映して運賃が高騰。郵船の2023年3月期は売上高が2兆6000億円、純利益を1兆円を見込んでいます。利益率が40%近い高水準ですが、これでも下方修正しているそうですから半端ないです。

 世界情勢、商品市況に大きく振られるのが宿命ともいえる海運会社です。自然エネルギーや新たな燃料源を取り込み、事業基盤の安定化をめざすのは極めて賢明です。経営計画ではアンモニア、LNG(液化天然ガス)、メタノールなどを代替燃料に4500億円を投じて将来的な収益力を高める考えです。

 近未来の経営環境を見抜き、しっかりと布石を敷き詰めるのはさすが郵船ということころでしょうか。

②構想する力;これから直面する状況を整理整頓して描き直し、対応できる計画を打ち立てる能力を評価します。 1・5点

 郵船に限らず海運会社は本来、先行きが読めない市況によって経営の業績が決まってしまいます。その典型はタンカーの運賃で、船舶不足を予想して早めに手配した海運会社は大儲けし、慎重に手配したところは儲け損ないます。

 しかし、企業経営は賭博ではありません。それを避けるためにも経営計画の作成は数値を積み重ねて計画を作成する経理・財務の考えが強く反映されてしまいがちです。そうなると自然、経営計画の数字がまるで辻褄わせのように美しく映ります。

 日本郵船は優秀な人材の宝庫です。世界経済、安全保障を読み、ビジネスを通じて体感しているのですから当たり前かもしれません。近未来を見通し、対応策の構想を描くまでの力は素晴らしい。

 ところが今回の経営計画もそうですが、自ら描く絵に満足しているかのような印象を受けます。目の前で待ち構えるリスクの多くはこれまでも予測してきたものがほとんど。その対応策も既視感があります。

  経営計画の性格上、手堅い内容になるのは当然かもしれません。厳しい情勢を見極めながら、収益を上げる算段をするのが経営企画ですから。ただ、今回も見透す力は評価したのですが、実行の具体案を示す構想する力は物足りない。すこし下げざるを得ません。

③実現できる力;目の前には難問が待ち構えています。対応する計画をどの程度実行できるのか。それとも絵に描いた餅か。1・2点

 実現となると、さらに乏しさを覚えます。

④変革できる力;過去の成功体験に安住せず、幅広い利害関係者を巻き込んで新しい領域へ踏み出す決断力を評価します。1・2点 

 三菱グループの源流として日本の経済・政治に幅広いネットワークを張り巡らせています。防衛やインフラなど国の骨格を支える三菱重工業と肩を並べるほどではないものの、情報収集能力や影響力は他の企業に比べたら、1歩も2歩もリードしています。その企業の地力を考慮すると、もっとカーボンニュートラルやESG・SDGsのリード役を演じても良いのかと思います。

 本社ビルを皇居前、東京駅前に構えている企業です。その存在感の大きさは誰もが認めます。優等生気質にありがちな派手なパフォーマンスが嫌いかもしれません。でも、もったいない。それは、日本経済にとっても、です。

⑤ファーストペンギンの勇気と決断力;自らの事業領域にとどまらず、誰も挑戦していない分野に斬新な発想で立ち向かうファーストペンギンの覚悟を持っているか。1・0点

 歴代の経営者を振り返ってください。日本の経済界をリードした人物の名前がずらりと並びます。私も取材で多くの方と会い、お酒を飲みました。その洞察力、スケールの大きさにいつも敬服したものです。でも、経営の実効力となると、こちらが勝手に過大に期待するせいなのか、物足りない。もっと日本経済を変革する大胆な挑戦を見てみたいです。実力は十分なのですから。

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