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ペットの世界も電力需給と同じ 潤い楽しみながら生活インフラは地方によろしく

 愛犬や愛猫のペットの飼育数が牛や豚など家畜を大きく上回ることを知ってましたか。薄々は実感できましたが、数字の裏付けを目の前にすると、かなり衝撃的な事実。先日開催された市立図書館の講座で獣医学を専門とする大学教授から詳細を教えてもらいました。

犬猫の飼育頭数は牛・豚を上回る

 農林水産省の統計によると、全国の飼育頭数は犬が710万頭、猫が900万頭近く。一人暮らしが増えているので、世帯当たりの愛犬・猫の数は増え続けているそうです。農水省の統計は「単身世帯と2人以上世帯を 分けて推計し、最後に合計する計算式に改定を行いました」と説明しているぐらいですから、精密なはずです。話題は横道にそれますが、猫の飼育頭数は2013年以来ゆっくりと増えており、犬の飼育頭数は減少しています。最近の猫ブームをそのまま反映しています。農水省の統計でさすがと思うのは、いわゆる野良猫はいれていませんと明記していることです。統計を極める人の気持ちが現れます。で、 単純に犬猫の飼育頭数を合計すると1605万頭を軽く越えます。

 これに対して牛や豚などの家畜を見てみます。乳牛の飼養戸数は1万3800戸で、前年に比べ600戸減少。飼養頭数は135万6000頭で、前年に比べ4000頭増えました。1戸当たり飼養頭数は98・3頭。畜産の最先進国であるニュージランドでも100頭以上にならないと経営的に楽にならないといわれいましたから結構つらいです。肉牛は飼養戸数は4万2100戸で、前年に比べ1800戸減少しました。養頭数は260万5000頭で、前年に比べ5万頭増加しました。1戸当たり飼養頭数は61・9頭となった。乳牛、肉牛の合計は400万頭近い数字になります。

 豚は飼養戸数は3850戸で、前回調査時と470戸減少しています。飼養頭数は929万頭で、前回に比べ13万4000頭増えています。1戸当たり飼養頭数は2413頭。牛と豚の飼養頭数は1325万頭を超えますが、犬猫の飼育頭数は牛と豚を合わせても270万頭を上回ります。

猫の飼育数は東京が1位、神奈川は2位

 驚愕の事実は東京です。 東京の畜産家が多いわけがありませんから、肉や牛乳など日常の食品は東京以外の地方に依存しているのは当たり前です。東京の酪農家は40戸程度ですから、知れています。消費地に近い栃木県や茨城、千葉などが乳用牛で全国トップテンに入っています。一方、犬、猫の飼育頭数は東京が一位、神奈川が2位を占めます。東京は52万頭、神奈川が48万頭を数えます。人口はそれぞれ1位、2位と続きます。平均貯蓄高は東京が1位。神奈川が7位。

表現は美しくないのですが、お金があるとペットに回るのか。趣味と畜産経営は別世界。当たり前。統計は素直に表現します。土地の広さや用地の価格、産業の広がりなどすべてを考えれば、農業問題は東京と地方で違いが生まれるのはおかしなことではありません。

発電の地方偏重と同じ

 既視感があります。まるで電力の発電場所と需要の違いと同じです。東京の生活を続けるために地方に何かが偏在している。東京は地方ではありません。原子力発電所を建設する広い用地は高くて手配できません。牛や豚などを育てる牧場を設ける用地は安くて、しかも臭いを気にない場所は東京では確保できません。すべて納得します。それでもなんかうなずけません。

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