「へえ〜、やっぱりねえ」と思わせるブルバーグの記事を見つけました。投資の冠にESGを使うのをやめて、もっと他の名称に変えるべきだとの声が出ているそうです。記事によると、オックスフォード大学サイード・ビジネススクールのロバート・エクルズ教授はESGという言葉には「もはや価値はない。変えようではないか」とインタビューで答えています。
ESGの理解不足が遠ざける
エクルズ教授はハーバード大学ビジネススクールで12年間、サステナビリティーを研究してきました。「私は喜んでESGという言葉を使うのをやめる」とし、「今や人々はESGとあまり関係のない理由で、ESGをひどく嫌っている」と述べています。
ESG投資をめぐる疑問は素朴です。取り組むテーマは重要だが、実践を表明している企業はどこまで具体的に進めたのか、それが社会にどう反映したのか。まだESGやSDGsは社会に馴染み始めた段階です。誰もがわかる説明とまではいかなくても、数値目標と達成度をグラフで表すなどいわゆる「見える化」の試行錯誤ぐらいは欲しいという希望が広がっているのです。
地球環境と経済成長が両立できる環境経営の試みは企業経営の改革から始まり、2000年代には新しい投資案件として浮上していました。もう10年以上の投資経験を積み重ねたファンドもいます。
投資に対する透明性が不十分
ブルンバーグはその一つであるグリーン・センチュリー・キャピタル・マネジメントのレスリー・サミュエルリッチ社長の意見を紹介しています。「ESGについて投資家はより高い透明性を求めているのに、応えていないままだ」。他のファンドからも、ESGに対する理解が共有されていないため、投資家や企業は混乱していると見る向きもあります。
早稲田大学の根本直子教授の論文によると、ESG投資は7種類に分類できるそうです。
①ネガティブ・スクリーニ ング;外形的基準で特定のセクターや個別企業をポートフォリオから除外 (石炭、アルコール、たばこ等)
②ESGインテグレーション;投資プロセスにESG要因を組み入れて投資判断
③エンゲージメント;議決 権行使 ESGの課題について、株主として議決権行使や、企業にエンゲージ メントを行い改善を促す
④国際規範スクリーニング;国際的な規範に違反した企業をポートフォリオから除外
⑤ポジティブ・スクリーニ ング;各セクター内でESGレーティングが高評価の企業でポートフォリオ を構築
⑥サステナブルテーマ投資;特定のテーマ(クリーンエネルギー、女性活躍等)を投資アイディ アとする
⑦インパクト投資;社会問題、環境問題の解決を目的とした投資
根本教授によると、欧米や日本で広まっているESG投資の種類が異なるそうです。最も早くから普及している欧州はネガティブスクリーン、米国はインテグレーション、日本はインパクト投資とそれぞれ色分けできるようです。
ESG投資は急拡大しており、まだ勢いは続くのは確実です。冒頭でもうESGという名称を使うのはやめようという意見は出ていますが、大きな流れは変わりません。ただ、欧米、日本だけをみても、ESG投資に対する姿勢が異なることは、投資の成果に対する考え方、理解、満足度も違っていることを意味しています。投資の市場規模が拡大すればするほど、市場参加者は増えます。
専門的な知識を持つ機関投資家だけなら軋轢は小さく済みますが、参加者が増えれば増えるほど、理解度は落ちてきます。「なんだ、思ったより投資リターンは少ないじゃないか」、あるいは「地球や社会に貢献するからいう説明だったが、結局に企業の収益を手助けしただけじゃないか」との声が高まるのは必至です。
遠回りだけど、一つ一つ見極めて前進を
ESG投資は市場規模だけは他を圧倒するほどの勢いを整えました。しかし、まだ未成熟な面が多いと言わざるを得ません。即断即決が命の金融業界にとって遠回りに映るでしょうが、一つ一つ見極めて前進する丁寧さが求められています。
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