金融大手のクレディ・スイスが厳しい眼にさらされています。株価が急落し、経営の先行きに対して不安視する見方が広がっています。同社は2021年春のアルケゴス・キャピタル・マネジメントの破綻など大きな損失を被っています。その後も業績不振の見方が止まらず、経営のスリム化などで収益力の再構築に取り組んでいます。クレディ・スイスの内実はよくわかりませんが、世界的な金融機関の苦境ぶりから今、ブームとなっているESG・SDGs関連の投資に対する警鐘を聴くことができるはずです。
ブルームバーグなど欧米のメディアによると、クレディ・スイスの経営幹部は社内外に資本関連の財務状況は健全であることを説明しており、大きな騒動に発展する可能性は今のところ小さいようです。
金融市場は激動期に
ただ、世界の金融状況はかなりの激動期に入っています。米国をはじめ欧州などの中央銀行は相次いで金利を引き上げており、株式市場の動向も上げ下げの幅を広げ、取引内容は激しさを増しています。金融市場が不安定に移行しているだけに、金融機関や金融商品の評価が一変し、奇妙な憶測が予想外の事態に発展する恐れがあります。
アルケゴスの破綻はクレディ・スイスだけでなく、日本の野村ホールディングス、三菱UFJ証券ホールディングス、みずほフィナンシャルグループも大きな損失を被っています。発端はアルケゴスが考案したレバレッジを生かした投資手法で、運用していた株式の急落によって金融機関から追加担保を求められ、巨額の損失に発展したものです。クレディ・スイス、野村などプロの機関投資家すら見抜けなかった落とし穴にはまったわけです。
ESG・SDGsはリーマンでもアルケゴスでもない
アルケゴスとESG・SDGsの投資ブームが直接、関連するわけではありません。しかし、欧米を中心に拡大したESG・SDGs投資は日本でも広がり、一般投資家の間でも高い関心を持たれています。企業の資金調達でもESGやSDGsの冠がついた案件が目立っています。金額は小さくても、カーボンゼロを謳い文句に「環境にやさしい投資案件」として太陽光など再生可能エネルギーを目玉にした金融商品が個人投資家向けに販売され始めており、その底辺は広がり続けているのが現状です。
投資判断は個人それぞれのリスク判断ですから、余計なお世話と言われるかもしれません。ただ、クレディ・スイスや野村でも見抜けない投資案件があったのも事実です。ただ、注意すべき警鐘が鳴り始めているようです。
最近になってESG・SDGsの投資に慎重になる機関投資家の動きが目立ってきました。カーボンゼロなどを目玉に巨額の資金を集めたものの、事業収支とカーボンゼロなどに向けた経営への負荷が帳尻に合わず、予想通りの利益をあげられない可能性が出てきたからです。
「地球環境を守る」に目を奪われ、リスクを見落とす恐れ
リーマンショックを持ち出すまでもなく、投資家は「かならず儲かる」と信じてマネーを投じます。ESG・SDGsの関連投資ブームがリーマンの再現、アルケゴスの破綻の予兆というつもりはありません。確実に言えるのは、思わぬ落とし穴はあるのです。「地球環境を守る」という誰もが賛同するテーマに隠れて、リスクを見落とす怖さを忘れたくありません。
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