ESG・SDGsと企業経営

オープンハウス ESG・SDGsで資金調達、「環境」でニッチ戦略の道をどう開くか

 オープンハウスグループが三井住友銀行の「ESG/ SDGs評価シンジケーション」を活用して205億円を調達しました。三井住友銀行と日本総合研究所が作成した独自の評価基準でESGとSDGsの取り組みを評価され、”合格”したそうです。

三井住友銀と日本総研からお墨付き

  オープンハウスは1996年創業の住宅メーカーで、「東京に、家を持とう。」をキャッチフレーズに大手住宅会社が注目しない狭い土地や歪な区画を取得して住宅を販売するニッチ戦略を展開してきました。大手住宅メーカーとの違いを前面に出して強気の販売戦略を成功させてきただけに、ESG・SDGsを掲げた経営に軸足を移した後、今度はどういう戦略を打ち出すのでしょうか。

 オープンハウスはテレビなどでユニークな広告を展開しているので、ご存知の方は多いはずです。蚊取り線香の金鳥で知られる大日本除虫菊はかなりパンチの効いた広告を懲りずに続けかなり好きですが、オープンハウスのテレビCMもキンチョウに負けず劣らず結構、突っ張っています。

経営はニッチ、個性で大手と差別化

 最初の頃のCMは何を広告しているのか理解できない時もありましたが、後発の住宅メーカーですからまずは社名を知ってもらうという狙いだったのでしょう。有名な俳優さんを使っていましたから、広告宣伝も成長投資のうちと腹を決めている会社なのだろうと興味津々で見ていました。

 CMを見ているだけで業容が拡大しているのが分かります。最近は広告の内容が変わりました。面白おかしく社名さえ覚えて貰えばラッキーと割り切っていたのが、本気で住宅を売り出そうとしているのがわかってきます。

 偶然なのか不思議にも住んでいる街を歩いていると、オープンハウスのチラシや販売物件が目につき始めました。

 もう20年以上も空き地だった道路沿いの狭い土地が区画整理しました。「へえ、こんな立地でも住宅を建てても売れるのかな」と首を傾げる場所です。物件の看板を見たら「オープンハウス」。

街のあちこちにオープンハウスの物件

 真夏のかなり高温の日でした。社員かアルバイトがわかりませんが、首から物件案内の看板をぶら下げて目の前に通る人に新規物件の売り出しを知らせています。今の時代に首から看板!、かなり昭和を思い出させる住宅販売だなあとちょっと驚きましたが、担当を変えながらも1週間ぐらいは通行量の多い道路沿いに立っていました。

 「思わず今ならブラックか?」との邪推もしたくなりますが、営業力と意識はかなり高いと察しました。後発で大手を追い上げる企業の気構えは違います。今は令和ですが、昭和、平成の時代に急成長した企業経営をなぞっているかのようです。半年以上過ぎましたが、もう10年以上も空き地だった角地に家が数軒建設され、完売されました。

 気付いたら、あちこちにオープンハウスです。畑と畑の狭い空き地に新しい建売住宅が立ちましたが、オープンハウスの新規物件でした。駅前にも古い家屋が撤去された後に2軒の新規住宅が立ちましたが、やはりオープンハウス。この地域で営業するぞと決めたら、その攻撃力は恐るべしです。

 そのオープンハウスがESGとSDGsの軸に経営拡大を目指し、205億円の資金を調達しました。経営計画で2023年に売上高1兆円をめざすと掲げており、9期連続して過去最高益も維持しています。従来の成長戦略に加え、ESG・SDGsの実践を求める環境、社会の持続性、経営統治の3要素を重視しながら、新たな取り組むを開始することになります。

 発表によると、社内にサステナビリティ委員会を設け、ESG リスクとその対応への進捗状況を各事業部門・グ ループ会社ごとに管理するとともに、経営内容も刷新していきます。事業に伴い発生する環境負荷を削減するほか、太陽光発電も積極的に導入。業務はITシステムを駆使して効率化を進め、国産材の使用などで地域との協業をこれまで以上に深める考えを示しています。

1兆円企業めざし、どう変革するの

 住宅業界でも今やESG・SDGsの取り組みは経営の基盤になっています。オープンハウスが急成長企業の時を過ぎ、次のステップに移行するためには大手住宅メーカーと同列の経営レベルに到達しなければいけません。 

 ESG・SDGsの実践はその一つに過ぎませんが、実践するハードルは予想以上に高いのも事実です。がんばる姿勢だけでは評価されません。手抜き工事や用地取得の詐欺事件に巻き込まれた他の大手住宅メーカーのつまづきをみればすぐにわかります。

 オープンハウスが個性的な事業に磨きをかけながら、ESG・SDGsをどう経営に取り込み、変革していくのか。大手との差別化をどう維持するのか。とても興味があります。

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