ESG・SDGsと企業経営

ヘラルボニーと味の素AGF 知的障がい者のアートをドリンクディスペンサーに

 ヘラルボニー(盛岡市)と味の素AGF(東京都渋谷区)が9月1日から「アートドリンクディスペンサー」の設置を始めます。ヘラルボニーは、知的障がいのアーティストと契約して新たなアートの提示に努力しています。味の素AGFは会社オフィスなどでコーヒーなどを主力に提供するドリンクディスペンサー(給茶器)を設置していますが、この機器にヘラルボニーが契約する作家作品をマッピングし、新しいアートの理解と普及を支援する形になります。

作家2人の作品を給茶器のパネルに描く

 ヘラルボニーと味の素AGFの発表などによると、ヘラルボニーが契約する作家2人の作品を活用します。神山 美智子さんの「からふるな人間と動物」、岡部 志士さんの「Scratch Works Yay!Yay!No.8」の2作品で、給茶器のパネル全体を埋め尽くするカラフルな造形を描き出しています。味の素AGFは「コロナ禍により人との繋がりやコミュニケーションの機会が減少する中で、“人や社会をおもい、コミュニケーションの輪ができる”きっかけを生み出したい」という考えでヘラルボニーと協業することにしたと説明しています。

 ヘラルボニーは知的障がいのあるアーティストと契約して、作品ライセンスを施設や商品などに提供します。提供を受けた受けた会社は作品使用料などで支払い、アーティストらの活動を支援します。今回の事例でみると、ヘラルボニー、アーティスト、味の素AGFが連携して作品の素晴らしさをディスペンサーだけでなくネットサイトやSNSなどを通じて広め、知的障がいのあるアーティストが創作するアートの認知度を高めていくことになります。

 ヘラルボニーのサイトアドレスはhttps://www.heralbony.jp/

 知的障がいのあるアーティストが創作するアートは世界的に注目を浴び、関心が広がっています。フランスでは「アール・ブリュット」、英語では「アウトサイダー・アート」と呼ばれ、かなり一般的になっています。日本でも知的障がいのあるアーティストを育てる工房も増え、全国に専門に展示する美術館や施設が設けられています。

ヘラルボニーは「異彩を、放て。」がミッション

 ヘラルボニーに注目する理由は、アート作品を企業などと結びつけて事業として継続できる仕組みを考案し、実践していることです。社長の松田崇弥さん、副社長の松田文登さんの双子で、知的障がいのある兄が発する言葉を社名に冠して「異彩を、放て。」をミッションに活動しています。

 障がい者の活動はパラリンピックなどを機会に幅広く知られてきます。知的障がい者も米国で生まれたスペシャルオリンピックスという国際競技大会などを通じて新聞、テレビなどに登場しています。アート作品もNHKのEテレなどで積極的に取り上げ、固定観念に縛られがちな美術に対する理解が多様化しています。

この事例のようにESG、SDGsの実践が広がって欲しい

 今後も障がい者の活動範囲がどんどん広がり、新たな個人の才能が多くの人々に知られ、評価される社会になって欲しいです。ヘラルボニーと味の素AGFの今回の協業はその一例に過ぎません。しかし、ESG、SDGsを経営計画に書き込んで企業ブランドを高めることよりも、給茶器のパネルを使ったESG、SDGsがとても大きな実践力を示しています。当たり前のようにあちこちで見かける風景になるといいなあと思います。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


最近の記事
Eco*Ten
  1. 再開発は誰が決める 渋谷・六本木をコピペした明治神宮外苑は都民の財産か イコモスが見直しを

  2. カーボンゼロを目指すJERAの不思議 新エネの旗手なのか、化石燃料の隠れ蓑なのか

  3. 西武鉄道 再エネで全路線を運行 終着駅は地産地消型のエネライフでカーボンニュートラル

  4. 後発薬品だからって不正もゾロゾロは許されない 沢井製薬、日医工、小林化工

  5. 公共リサイクルボックスの挑戦を ゴミ箱と並べリサイクルを根底から考えるアイコンに

  6. 排出権取引市場が開設 あまりにも遅い試みは、世界から取り残された日本を映し出す

  7. EUが「エコ」を厳密管理 安易な広告表示は禁止 企業は化粧せず素顔で地球環境を語れるか

  8. 国連「気候サミット」日本は発言機会与えられず 見透かされた地球環境の本気度

  9. ジャニーズ、ビッグモーターなど不祥事企業の第三者委員会、信頼性を支えるのは情報公開と内部告発など

  10. バブル以前に終わる日本のESG・SDGsバブル 体面を重んる薄ぺらな化粧はすぐに剥げ落ちる

  1. Eco*ユニコーン創生 株式上場益の2倍相当を無利子で10年融資、脱炭素のブレイクスルーへ

  2. ESGと経営戦略①マクセル が全固体電池の先駆に エネルギーのスマホ化を加速

  3. ダボス会議 悲喜劇の舞台に形骸化、そろそろ賞味期限切れが迫っている

  4. 気候変動ランキング① CCPI 日本は59ケ国+EUのうち50位 政策の具体性と実現に低い評価

  5. 政府、原発推進へ大転換 及び腰から本腰へ 本気度をEco*Ten 10点満点の3・5点

  6. 経産省が国交省を行政指導する日は近い?! 企業の人権侵害の手引き公表

  7. スズキEco*Ten(上)伸び代はいっぱいですが、実行と成果はこれから

  8. ディスコ Eco*Ten 10満点の8・0点 SDGsの総花的な贅肉を削ぎ、強い分野をより研磨する

  9. キーエンス Eco*Ten は10点満点の6・5点 環境は身の丈に合わせて努力

  10. JFE 高炉から電炉へ 脱炭素の覚悟 過去の栄光と葛藤の末に Eco*Ten 6・5点

月別のアーカイブはこちら

カテゴリー

明治神宮外苑から信濃町へ

TOP