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環境経営度 by AI ③ 人工知能は企業を複眼、解析するリトマス試験紙

 財務分析の専門家集団である会計事務所でさえ、企業経営を見誤る時があります。世界4大会計事務所の一員であるPwCジャパンは不適切会計のニデック、社員100人超が顧客から31億円を詐取したプルデンシャル生命保険で監査法人を務めていますが、不祥事の兆候を見抜くことができませんでした。

会計事務所でさえ見逃す企業不祥事

 まして公認会計士の資格を持っていない多くの人が有価証券報告書のページを何度もめくっても結局は企業経営の実像を解明できないのでしょうか。

 そんなことはありません。売上高、利益など企業の業績を説明する数字は、あくまでも今この瞬間を知る目安と割り切りましょう。

 株式市場の相場の高安を見極め、毎日を投資するデイトレーダーなら、目先の瞬間、瞬間の企業業績を重視するのは当然ですが、多くの個人投資家は中長期な視点で企業の将来を知りたいはず。今年の決算数字が多少期待外れでも翌年以降に大きく改善、上昇するなら、目先の赤字などは気にならないでしょう。

米ユニコーンは創業時、巨額赤字

 グーグル、ファイスブック、アマゾンなどと次々と誕生するユニコーン企業は、創業時から赤字が続いていました。巨額赤字に慄いて手控えるのか、それとも将来かならず大化けすると確信して投資するのか。この判断が投資家としての醍醐味であり、大きなリターンを手にできるかどうか勝負の分かれ目といえます。

 当然、最も重視するのが成長力。言い換えれば、目の前に見える姿がどう変わっていくのかを知ることです。流行りの言葉でいえば、サスティナビリティ、持続可能性を重視することです。長年の投資によって優れた勝負勘を体得したソフトバンクの孫正義氏なら容易いことかもしれませんが、その他大勢の投資家にはかなりの難題です。

持続可能性をどう見極めるか

 しかも、もっと不可解な難問が待ち構えています。企業の持続可能性とは何か。例えば、エヌビディア。大人気の人工知能に欠かせない半導体を生産する最先端技術を持つメーカーとして世界の株式市場に活況をもたらしていますが、人工知能そのものは実現性と事業性について1950年代から議論されており、総務省によれば「ブームと冬の時代」が繰り返され、現在は第3次ブームとして花開き、2020年代から爆発的に広がっているのが現況です。

 生成AIの旗手であるオープンAIも株式公開する方向ですから、まだまだ人工知能ブームは続くでしょう。ただ、これだけの大ブームに発展すると予見できた人は何人いたでしょう。エヌビディアの創業者、ジェンスン・ファン氏は創業前、ファミリーレストラン「デニーズ」で皿洗いをしながら、夢の実現に向けて努力していました。当時、世界最大の時価総額を創出する企業を率いると予見できた人は皆無ですし、ファン氏が語る夢物語を信じた人はいたのでしょうか。

孫正義氏でさえ難しい

 今、すべての投資をAIに賭ける孫正義氏の投資履歴をみてください。1981年にパソコン用ソフトの販売を手がける「日本ソフトバンク」を創業した後、事業は変遷し続けます。米国ジフ・デイビスの出版部門と展示事業「コムデックス」を買収して情報産業に手を広げ、その後は検索サービスのヤフー、携帯電話などに業容を拡大。2000年代からネット販売のアリババ、スマホ向け半導体メーカーのアーム、サウジアラビアと組んだ「ビジョンファンド」と目まぐるしく投資事業は進化します。そして今は人工知能に。

 成長企業の目利きと言われる孫正義氏でさえ、一寸先は闇。企業の成長力、持続可能性は読めないのです。その時、その時の潮目の変化を見極め、企業の持続可能性を嗅ぎ分けているのです。

 もちろん、持続可能性のキーワードは人工知能だけではありません。しかも、企業を解析する目的は投資だけではありません。日常生活で購入する製品が安全かどうか。優秀な製品を開発していても、環境に大きな害毒を陰で垂れ流していないのか。好むと好まざるにかかわらず、私たちの生活は企業活動と共に築き上げているといって良いでしょう。

手軽に人工知能で試験

 企業の選別は必要なのです。企業経営を解析する方法は数多ありますが、判定の道具の1つとして人工知能(AI)を使ってみたいと考えています。パソコンやスマホがあれば、Windows「copilot」、グーグル「Gemini」、オープンAI「ChatGPT」を手軽に使えます。人工知能の精度もどんどん進化しています。

 いろいろな視点から企業を360度、眺めまわすことが簡単になりました。トンボの目、つまり複眼のように一度にたくさんの風景をチェックできるようになるのです。可能になれば、素人も孫正義氏に負けぬ嗅覚と判断力を養えると信じています。

 人工知能を信じ切るわけではありません。あくまでもリトマス試験紙。どんか検査結果ができるのかを瞬時に見極めるのが目的です。視点、発想を組み合わせて試験していけば、これまで目にすることがなかった企業の素顔を見ることができるかもしれません。=次に続く

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