ESG・SDGsと企業経営

靴箱が教えるリサイクルの経済 年末は小売店のご都合主義で押し付け合い、結局ゴミに

 お正月明け、驚く経験をしました。毎日散歩に履く靴の底がすり減ってしまい、新年を機会に買い換えることにしました。駅前の大手スーパー内にテナントとして入居している有名靴チェーンに初売りキャンペーンも期待して向かいました。ドイツの人気ブランドでありながら、外見がちょっと小太りなせいか、大幅な割引価格。靴底はしっかり。試し履きしても靴のバランスに違和感がないので即決。

底が磨耗した靴を買いに有名チェーン店に

 靴を収納した箱を抱え、割引券が付いたスーパーの初売りチラシを手に持ってレジへ。支払いを済ませる際、目の前にレジ台の上に靴箱が置かれていたので、念のためにお願いしました。

「さっきもお願いしましたけど靴を収納した箱は不要なので、いつも靴だけを持っていきます。箱はお店からリサイクルに出してください」

「すいません、今はお客さんに持って行ってもらっています」

「えっ?!靴箱は家に持って行っても再生紙としてリサイクルに出すだけですから、靴を買う時はいつもお店に置いてきます。以前に購入した時もそうお願いして置いてきましたけど・・・」

「いやあ、テナントとして入居しているスーパーも合わせると、年末年始は箱などリサイクルする紙や段ボールが大量に出るので、お客さんに持って行ってもらうのです。うちだけの事情じゃないんです」

「これまでもショッピングモールに入居している靴店で購入していますが、いつも靴箱を受け取ってもらっていますよ」

「アウトレットでも、当たり前になっていますよ」

「アウトレットで買った経験がないから、知らないけど・・・

 靴を収納した箱の扱いで結構なやり取りなってしまいました。靴店のレジ担当は若いスタッフ。押し合いへし合いをしてもかわいそうだし、「このオヤジ!!」と嫌われたくないので、結局は靴箱を自宅に持って帰りました。

靴箱の処理をお願いしたら「年末年始なので持ち帰って」

 頭の中は「???(疑問符)」でいっぱい。些細なことに思われるかもしれませんが、「靴箱の処理は誰が責任を持つのか」が消えません。お正月なので、ここで靴箱の処理をシミレーションしながら、リサイクル経済について考えてみます。

 靴箱は本来、販売する靴を購入するお客さんに手渡すまで傷つけずに保管する役割。きれいな飾り箱に収納される靴もあるかもしれませんが、今回は初売りキャンペーンの対象品。包装する箱はいつも通り、機能重視の簡素な作り。靴を取り出した後は、箱の要所を外して平たい板紙に戻すだけ。仮に靴店に箱を置いても、大きな空間を占めるわけではない。自宅もそうです。

靴箱の経済をシミレーション?!

 ただ、靴はお金を出して購入しています。「俺はお客だ」と胸を張るつもりは全くありませんが、靴箱代を差し引いた価格ではないので支払った金額には靴だけでなく箱代も含まれているはずです。ちゃんと代金を支払った後に価格に含まれた箱をわざわざ自宅に持ち帰らずに店に置いていく行為は、明らかに自損です。その代価として靴箱を置いてと頼む行為はそう無茶なことはでないはず。

 一方、お店は、お客から代金を受け取った靴と箱のうち箱をお店に置いていかれることで代金以上の損失が生まれるのか。お店が処理する手間を経済学的にどう判断するかですが、箱代のコストは支払いで相殺されただけで箱の処理費用は受け取っていないと考えることはできます。もしお店が箱の処理費用をコストと捉え、お客から箱処理の依頼が多いなら、靴メーカーに対し箱を使わずに保管・運送に必要な物流システムを要求するのが筋。

 ESG、SDGsが叫ばれ、スーパーも靴店チェーンも靴メーカーもホームページなどでしっかりとリサイクルやゴミの減量を誓っています。無理な要求ではないでしょう。靴箱が不要とお願いする客は増えているそうですから、新たな物流システムを考えてもおかしくはありません。

 仮に靴店がテナントとして入居する大家であるスーパーが自らも大量の廃棄紙箱が発生するので、テナントに対し紙の減量を要求し、お客に持ち帰るように求めている場合を想定します。ちょっと自信はありませんが、自ら廃棄される紙箱をリサイクル、あるいは減量する努力を放棄し、入居テナントに廃棄責務を転嫁しているように思えます。靴店から徴収するテナント料金には廃棄に関することは含まれていないのでしょうか。

リサイクルは結局、トランプの「ババ抜き」か

 「なあ〜んだ、結局はリサイクルを通じて再生すると宣言しても、できるだけ手間を省くことが優先されてしまうのか」。今回の靴箱を巡る大家のスーパー、テナントの靴店、購入したお客の流れを冷静に眺めると、まるでトランプゲームの「ババ抜き」。誰が魔女のトランプを手にするのか。相手が気づかないうちに手渡した方が楽に決まっています。

日本はゴミの8割を焼却、リサイクルは国際的に低い

 日本国内ではリサイクル率は高いと自負する声が多いのですが、実は国際的に低いのです。日本のゴミ処理は焼却が多く、全体の80%を占めます。OECDの加盟国はほとんどが20〜30%。なんのことはない、国を挙げてリサイクルと声高に連呼していますが、8割もゴミとして燃やしているのです。

 靴箱を自宅へ持ってきてよかった。「おまえは焼却されずに再生できるのだ」と箱に声をかけました。

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