Eco*nomy

EUが「エコ」を厳密管理 安易な広告表示は禁止 企業は化粧せず素顔で地球環境を語れるか

 欧州連合(EU)が地球環境への配慮の意味を込めた「エコ」表示の使用範囲を厳密に管理する方針を決めました。「環境にやさしい」「カーボンニュートラル」「生分解性」など多くの商品やサービスで採用されている言葉について、表現できる正確な根拠が証明することを求め、証明されない場合は採用を禁止します。2026年までに実施する方向です。背景には「エコ」などを広告で安易に使用して地球環境を破壊するイメージを拭う「グリーンウオッシュ」を排除する狙いがあります。

根拠が証明されなければ禁止

 1990年代に入って、地球温暖化による気候変動は政府や企業に大きな変革を求め、企業は製品やサービスなどで「環境にやさしい」を前面に出して「地球を破壊しない」事業をアピールしてきました。トヨタ自動車のハイブリッド車「プリウス」が大ヒットしたのは、その象徴です。身近なアイテムでみれば、買い物袋として繰り返し使える「エコバッグ」でしょうか。

 いずれもヒット商品となっていますが、ハイブリッド車は部品やバッテリーの生産工程で大量のCO2を排出しますし、エコバッグも素材選びからリサイクルを徹底しなければ廃棄する繊維を増やすだけです。

 代替燃料が良い例です。化石燃料を利用した発電所、自動車、航空機などが代替燃料として注目する合成燃料は、原料を生産する過程で利用するエネルギーとして太陽光など再生可能エネルギーが求められます。原料から製品までの工程でCO2を排出しないでゴールできる製品はどの程度あるのか疑問ですが、EUとしてはそこまで徹底しなければ地球温暖化を阻止する「エコ」は実現できないという覚悟なのでしょう。

消費者の選別も厳しく

 真エコか偽エコを選別する消費者の目も厳しくなっています。EUの4カ国を対象とした世論調査によると、消費者の53%が製品説明に対して疑問を持っているそうです。エコと表する根拠が「曖昧、誤解を招く、またはない」と見抜いています。

 EUはエコ表示で取り扱いに注意すべき言葉として事例を挙げています。「カーボンニュートラル」「気候ニュートラル」「環境にやさしい」「エコ」「緑」「自然の」「生分解性の」「カーボンポジティブ」「エネルギー効率のよい」「バイオベース」「自然の友達」「生態学的な」「環境的に正しい」。身の回りを見渡すと、いくつかは必ず当てはまる製品表示があるはずです。

日本も覚悟と準備を

 日本も手をこまねいているわけではありません。2022年12月、消費者庁はストローやカップなどを販売する2社を景品表示法に基づいて措置命令を出しています。使い捨てられた後、時間の経過ととも土や海に影響を与えない成分に戻る生分解性があたかもあるように説明していましたが、実際には生分解性の機能はないと判断しました。ただ、エコ表示を禁止するEUほど劇的な措置に踏み込んでいるわけではありません。

 EUの判断は2026年までに実施する方針ですが、それまでには企業など多くの反論もあるでしょうし、エコ表示に根拠があるかどうかを判断する作業など膨大な手続きが待ち構えています。欧州の場合は、先鋭的な政策を打ち出して世界の主導権を握りたいという思惑も込められていますから、このままエコ表示の厳密管理が実現するかどうかは不明です。しかし、大筋の方向性は世界標準として広まるのは確実です。日本の政府も企業も覚悟を持って準備をする必要があります。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


最近の記事
Eco*Ten
  1. 三菱商事、洋上風力発電で頓挫 地球温暖化に対する本気度を占う試金石に

  2. 下請けいじめ駅伝?2連覇タマホームに一条工務店、オープンハウス、飯田と住宅メーカーが続く

  3. 紅麹で健康被害を引き起こした小林製薬 取締役をシャッフルすれば 経営責任もブルーレット?

  4. エネルギー政策は誰のために 政府か国民か「東京に原発」で活発な論議を メキシコ続く大統領

  5. プラスチックの環境汚染防止に国際条約は不要!消費者自らが実践しましょう

  6. オーロラとなったCOP29 地球温暖化と巨額資金のはざまに揺れる光と影に 人間は眺めるだけ

  7. COP29 気候変動対策が資金争奪戦にすり替わる 討議は「コップの中の嵐」に

  8. 日本でも内部告発で企業、組織が変革する動きは加速するか 消費者庁が刑事罰を検討

  9. 100億匹のズワイガニが死滅 被害額は20兆円? 地球温暖化の衝撃は止まらない

  10. 衆院選挙、異常な猛暑や豪雨は票にならない!?気候変動対策が公約に盛り込まれない不思議

  1. キーエンス Eco*Ten は10点満点の6・5点 環境は身の丈に合わせて努力

  2. 政府、原発推進へ大転換 及び腰から本腰へ 本気度をEco*Ten 10点満点の3・5点

  3. スズキEco*Ten(上)伸び代はいっぱいですが、実行と成果はこれから

  4. 日揮 スシローなどとSAF生産、ESG・SDGsが背中を押した驚きの提携

  5. ESGと経営戦略①マクセル が全固体電池の先駆に エネルギーのスマホ化を加速

  6. Eco*ユニコーン創生 株式上場益の2倍相当を無利子で10年融資、脱炭素のブレイクスルーへ

  7. ダボス会議 悲喜劇の舞台に形骸化、そろそろ賞味期限切れが迫っている

  8. JFE 高炉から電炉へ 脱炭素の覚悟 過去の栄光と葛藤の末に Eco*Ten 6・5点

  9. 気候変動ランキング① CCPI 日本は59ケ国+EUのうち50位 政策の具体性と実現に低い評価

  10. ディスコ Eco*Ten 10満点の8・0点 SDGsの総花的な贅肉を削ぎ、強い分野をより研磨する

月別のアーカイブはこちら

カテゴリー

明治神宮外苑から信濃町へ

TOP