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星野リゾートがグリーンファイナンス、環境関連の資金調達のチェック度は?

 星野リゾートがグリーンファイナンスを発表しました。環境格付けに基づいて金融機関から資金を借り入れ、環境に配慮したホテルや旅館に活用します。ESGやSDGs、環境を切り口にさまざまな資金調達手法がありますが、星野リゾートがグリーンファイナンスを通じてどんなことをするのだろう。そんな視点から資料を眺めながら、素朴な疑問をチェックしてみました。

グリーンローンで12億円あまりを調達

 資金調達するのは星野リゾート・リート投資法人。10月24日に公表した資料によると、既存の借入金借換えが目的で41億2000万円を調達しており、このうち12億2000万円をグリーンローンとして設定しています。

 グリーンローンとは星野リゾート・リート投資法人が設定しているグリーンファイナンス・フレームワークに基づいて実行される融資です。このフレームワークは日本格付研究所の審査を受けて総合評価で最上位の「Green1(F)」を得ており、星野リゾートは資金調達する際、金融機関に対する信用の裏付けとして活用。金融機関も星野リゾート・リート投資法人のフレームをチェックしてグリーンローンとして融資決定する手順を踏むそうです。

対象は適格要件を満たした8件

 グリーンローンとして融資を受けた資金は、星野リゾートの物件ならどれにでも利用できるわけではありません。投資法人が設定したグリーンファイナンス・フレームに適格する8件が対象になります。具体的には「界 鬼怒川」「クインテッサホテル大阪心斎橋」「界 アルプス(フロント棟)」「BEB5軽井沢」「界 加賀(新館)」「カンデオホテルズ佐野」「星のや軽井沢(ハルニレテラス)」「ANAクラウンプラザホテル広島」。

 今回資金調達した12億2000万円は約178億円で取得した「ANAクラウンプラザホテル広島」の当初借り入れのリファイナンスに全額活用するそうです。このホテルは適格要件を満たしているものの、他の物件よりは低い評価となっており、今回のリファイナンスを通じて評価を上げる努力が続くわけです。

生ゴミの堆肥化、ポンプボトルへの切り替えなどをチェック

 グリーンファイナンスの適格要件は予想以上に詳細です。融資を受けた物件に関するレポートは実施状況を説明するのは当然としても、その項目には改修前と改修後のエネルギー・水の使用量、再生可能エネルギーを利用した発電量・CO2削減量、生ゴミの堆肥化、シャンプーなどを固形石鹸からポンプボトルへの切り替え、歯ブラシのリサイクル本数などが設定されています。これらの実施状況は決算時にネット上で公開されるのも必須条件です。

 ESG・SDGs、環境などを謳った資金調達方法が多様化しています。関心の高い地球環境保護が軸になるだけに、調達金額は増える一方です。ただ、その資金の行方が一般の人にはよく見えません。内実は金融機関と融資先が納得していれば良いということになれば、かつてのリーマンションを招いた経験が全く生きません。

詳細な実施状況がネットで公開、多くの目で評価

 グリーンファイナンスという名の下に実施された資金調達の案件について決算時にきめ細かく公開されるのは、ホテル・宿などの利用者にとっても、企業経営のチェックにとても有効です。ネットなどを通じて企業の環境経営がいかに実践されているかの情報が増えれば、金融機関以外の多くの目でその環境経営が比較・評価され、底上げに大きく貢献できます。

 星野リゾート・リート投資法人はホームページで「グリーンファイナンス・フレーム」について説明しています。次のアドレスを参照してみてください。

https://www.hoshinoresorts-reit.com/ja/sustainability/finance.html

 

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