日本の女性の地位が国際基準で見ると、かなり低い。こういう結果を聞いても、驚かなくなってきました。この鈍感さが決して良いとは思えませんが、毎年さまざまなメディアやシンクタンクが公表する指標が念押しします。直近ではエコノミストの「ガラス天井指数」。日本はOECD29カ国のうち27位。最下位から数えて3番目。ひっくり返して最悪から数えると第3位。10年以上も前から国も企業も女性登用を謳い、新たな取り組みを拡大しています。それでも、なぜ?根底には大企業と中小企業、東京に代表される大都市圏と地方、それぞれの格差が女性の活躍を止める足かせになっているようです。
日本はOECDの最下位グループ
英経済誌エコノミストは、ハンバーガーの価格で国の購買力を比較するマック指数を創出するなどユニークな視点で経済をわかりやすく説明する編集で知られています。女性の「ガラスの天井指数」は先進国が占めるOECD29カ国を対象に昇進の度合い、給与水準、有給の育児休暇、政治的参加など10項目の指標で試算し、ランキングしました。
エコノミストは調査を始めた2013年以来、ランキング全体の改善の進み具合を氷河の流れと同じ程度と酷評していますが、ほとんどの国で前進していると評価しています。ちなみに第1位は2年連続のアイスランド。スウェーデン、ノルウェー、フィンランドの北欧諸国が上位に続きます。一方、スイス、韓国、日本、トルコの下位グループは順位の変動があっても顔ぶれは同じ常連組で、日本は下から数えて2番目が続いていましたが、今回は3番目に一つ浮上しました。
管理職の比率は半分以下
日本の女性活躍の度合いをいくつかの指標で見てみます。会社の管理職の地位にある女性はOECDで34%を超えました。3人に1人です。ところが日本はOECDの半分以下の14 ・6%。取締役会メンバーに限るとOECDは33%を占めますが、日本は18%。先進国の平均で考えたら、日本は半分程度ということですか。
ビジネスでの活躍が半分程度なら、政治はどうでしょう?OECDは議会の33・9%が女性。日本は10・3%。3分の1以下にまで落ち込みます。目を覆いたくなります。
女性の活躍を支援する諸施策が貧弱なわけではありません。まず子育てに必要な資金は日本が平均給与の14%。OECDの平均は15%ですから、ほんのちょっとだけ余裕があります。子育てで仕事を離れた期間に支払われる賃金は35・8%。OECDの29・5%を6ポイントも上回ります。父親の支援はもっと充実しています。子育て支援するために仕事を休む期間中に支払われる賃金はOECDは7・7%ですが、日本は31・9%と3倍以上。
日本の支援策はかなり上位クラス
子育ての資金面だけでみると、日本の支援策はかなり高い。実は韓国も日本と同水準の支援策を設けているそうです。それが、現状に十分に活かされていないのは、日本も韓国も「家事に選択する男性がほとんどいないから」とエコノミスト誌は指摘しています。
その背景には何があるのでしょうか。子育て支援の専門家の意見を調べてみると、「大企業と中小企業」「大都市圏と地方」に潜む格差が一因のようです。子育て支援策は国や経済界がもろ手をあげて推進しているだけに、大企業の支援策はかなり充実しています。育児休業、手当てなどの制度拡充は広がっており、積極的に取得するよう会社からの働きもあります。実際、大企業の子育て支援の成果はかなり上昇しているとの声を聞きます。
しかし、中堅・中小企業、自営業などになると話は変わります。制度として新設されていても、育児休暇を取得した従業員に代わって現場を任せる代替要員がいないなどを理由に結局は会社を休むことが難しい。日本の企業の99%以上が中小企業ですから、新設された制度を利用しようとしても手を挙げられない人が多く、結果として日本の育児支援の現状は低いままとなっているようです。
支援策だけでなく企業、社会の意識改革が必須
働く意欲を持つ、あるいは復職しようと考えている女性を取り巻く環境も似ています。東京など大都市圏では保育園など子育てインフラが充実していても、地方では依然、子育ては母親がやるべきとの考え方が一般的。両親などの支援があったとしても、子育てなどは家族内で完結するのが当然という意識がまだまだ根強いのが現状です。復職しようと考えても、周囲に子育て支援のインフラが不足しており、結局はチャンスを失うこともあります。
日本の女性がOECDの平均に迫る活躍をするためには、政府や企業の支援策など制度の拡充だけでなく従来の子育てに対する受け入れ、支援に関する意識が大きく変わる必要があります。
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