ESG・SDGsと企業経営

マルハニチロ 日本初のブルーボンドを発行 海洋保護の姿勢を明示

  大手漁業会社のマルハニチロが日本で初めて海洋保護を目的にした無担保社債を発行します。ESG・SDGsの考えに沿った社債の一つで、ブルーボンドと呼ばれ、マルハニチロはESGの趣旨に従った経営戦略を説明するため、「ブルーファイナンス・フレームワーク」を作成しました。この経営戦略は国際資本市場協会などの規定に適合させており、格付投資情報センターの評価も得ています。ESGやSDGsを唱えた資金調達が盛んになっていますが、国際的なガイドラインに適合しながらより具体的な趣旨の社債が増えれば、健全な市場の拡大が期待できそうです。

ブルーボンドはまだ実績が少ない

 マルハニチロはかつて世界の海に漁船や捕鯨船を送り出した大洋漁業とニチロが合併した会社だけに、海洋資源の保護は自らの経営の継続性に直結します。2022年3月に発表した中期経営計画でも、地球環境の課題に真正面から取り組み、気候変動、水産資源の減少 、取引企業などの人権リスクを認識しながら、「環境価値や社会価値の最大化を目指す」と強調しています。

 ESGやSDGsに関連した社債は環境保護、社会課題などの解決に向けて分類されますが、ブルーボンドは海洋資源の保護を主目的にしており、発行実績はまだ少ないそうです。

 日本の漁業会社は鯨、マグロなどを追い、世界の漁場に漁船団を送り出しています。しかし、中国はじめ世界の国々も魚を食べる習慣が広がり、地球の漁業資源は奪い合いとなっています。この結果、魚価も高騰し始めており、日本の漁業会社が他国と競って結局は輸入できない「買い負け」も目立ってきました。

養殖や加工など技術開発に資金

 これまでも世界各地で養殖資源に取り組んできただけに、日本が蓄えた養殖技術や漁獲手法は世界を先行してきましたが、世界各国との協力事業が増え、資金力にも余力が求められてきています。

 マルハニチロは世界でナンバーワンの会社の地位を維持するためにも、技術開発や加工生産などに先行投資する必要があると判断、ブルーボンドの発行を決めたとしています。

マルハニチロの「ブルーファイナンスフレームワーク」を詳しく説明しています。

https://www.maruha-nichiro.co.jp/corporate/ir/stock/bond/pdf/blue_finance_framework.pdf

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


最近の記事
Eco*Ten
  1. 個人情報を無断で持ち出す金融機関、保険、銀行の馴れ合い?顧客との信頼はゼロ?

  2. 「COP30は賞味期限切れ、パリ協定は消費期限切れ」で良いのか

  3. トヨタ、三菱ふそう、公取委の警鐘が聞こえない 下請法いじめ解消の鈍感さに呆れる  

  4. 環境経営の虚と実② EV支援策が消えた米国 蛇行するテスラはそれでも飛翔する

  5. 環境経営の嘘と実 ① 政府と企業の狭間を奔走するEV

  6. 損保ジャパン、個人情報の漏洩が止まらない 地に落ちた信用をどう回復するのか

  7. 日本生命 銀行情報を無断持ち出し 信用という保険を自ら貶め、捨てる

  8. 伊藤忠が女性活躍推進のオレンジボンド 三菱、三井と並ぶ年収引き上げなど、岡藤会長の人心掌握術に敬服

  9. 下請けいじめが大幅改善 中小企業庁、公取委の二人三脚が大成功!

  10. 国際司法裁判所 気候変動対策の義務を勧告 後退りする世界へ警告

  1. 気候変動ランキング① CCPI 日本は59ケ国+EUのうち50位 政策の具体性と実現に低い評価

  2. ダボス会議 悲喜劇の舞台に形骸化、そろそろ賞味期限切れが迫っている

  3. JFE 高炉から電炉へ 脱炭素の覚悟 過去の栄光と葛藤の末に Eco*Ten 6・5点

  4. スズキEco*Ten(上)伸び代はいっぱいですが、実行と成果はこれから

  5. Eco*ユニコーン創生 株式上場益の2倍相当を無利子で10年融資、脱炭素のブレイクスルーへ

  6. 経産省が国交省を行政指導する日は近い?! 企業の人権侵害の手引き公表

  7. ESGと経営戦略①マクセル が全固体電池の先駆に エネルギーのスマホ化を加速

  8. キーエンス Eco*Ten は10点満点の6・5点 環境は身の丈に合わせて努力

  9. ディスコ Eco*Ten 10満点の8・0点 SDGsの総花的な贅肉を削ぎ、強い分野をより研磨する

  10. 日揮 スシローなどとSAF生産、ESG・SDGsが背中を押した驚きの提携

カテゴリー

明治神宮外苑から信濃町へ

TOP