ESG・SDGsと企業経営

製造業が再生エネに切り替え 取引や採用などの必須条件に 太陽光など普及を後押し

 製造業が再生可能エネルギーに切り替える動きが広がっています。太陽光や風力を使って生み出した電力で工場などすべての事業所を運営します。地球問題化による気候変動対策を経営評価の基準に設定し、再生可能エネルギーの使用を取引条件として求める大企業が増えているからです。日本の産業界は世界の中でカーボンニュートラルに対する経営改革が遅れていますが、再生可能エネルギーへの切り替えを宣言するメーカーが増え続ければ、普及するスピードが鈍ってきた太陽光などの新設にも刺激を与えます。

エプソンは全世界で切り替え

 エプソンは2023年に世界すべての事業所で再生可能エネルギーに切り替えます。日本の製造業では初めてだそうです。2021年には国内事業所を全面的に切り替えており、海外も2020年から欧州や米国で始め、23年中に終える計画です。全拠点の再生可能エネルギーで年間約36万トンのCO2が消えます。ホームページで小川 恭範社長は説明しています。本社の傍らにある諏訪湖『汚してはならない』という創業者の想いがあり、創業当初より、環境活動に積極的に取り組んでまいりました」。エプソンは地球温暖化ガスの一つであるフロン全廃でも先駆けており、日本の環境経営のトップグループを走っています。

 シチズン時計(東京都西東京市)は2022年9月、国内の事業所で使用する電力を実質的にCO2を使わないの再生可能エネルギー由来に切り替えました。年間約13000トンのCO2削減効果を見込んでいます。使用するのは、東京電力エナジーパートナーが調達する再生可能エネルギー指定の非化石証書が付与された電力です。シチズングループとしても国内外の製造拠点で太陽光発電設備を順次導入しています。

アップルなどが取引の条件に設定

 再生可能エネルギーの切り替えを加速する背景には地球温暖化対策がありますが、取引条件として求める動きも後押ししています。アップルは2021年3月、調達する部品メーカーなど110社以上に対して使用する電力を再生可能エネルギーに切り替えるよう求めました。アップルは巨大企業だけに、CO2換算で年間1500万トン分ができるそうです。自動車で試算すると、340万台分に相当すると説明します。ソニーやホンダなど世界で事業展開する企業も相次いで再生可能エネルギーへの切り替えを求めており、取引・事業を継続するためには追随せざるをえません。

 企業イメージを高めるメリットを求める動きも加わっています。求人活動するするうえで、地球環境にどう対応するかを企業選択の一つい考える若者らが増えています。アップルやソニー、ホンダはブランド力で求人に苦労しませんが、中堅中小企業は環境への取り組みを前面にアピールしています。通常の電力契約を見直すきっかけとし、電気代の削減効果を引き出す例も増えているそうです。

中堅中小企業にもメリット大

 再生可能エネルギーの切り替えが取引の継続あるいは新規獲得のみならず、求人など人材育成に寄与する認識が広がっています。予想以上に製造業の背中を押すエネルギーになりそうです。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


最近の記事
Eco*Ten
  1. 小林製薬とビッグモーター 不正の図式が同じに見える

  2. 地球温暖化はワイン産地を北へ、北へ 北海道のピノがうまい

  3. ニュージーランド 世界初の牛のげっぷ税を撤回 試行錯誤がエコを進化

  4. 三菱UFJ銀 顧客情報を違法に共有 窓口は厳守でも経営の本音は収益重視

  5. 最近、聞かないESG、SDGs もう当たり前?あるいは賞味期限切れ!? 

  6. 景観で国立市のマンションが解体するなら、明治神宮外苑も・・と誰もが

  7. 国のジェネリック普及 効能は先発薬と同じでも、供給力と信頼はまだ後発のまま

  8. パリ・シャンゼリゼは緑増やし、人が回帰する街に 神宮外苑前は緑の回廊から高層ビルの街へ

  9. 環境省 霞ヶ関の病に侵され、水俣の声が聞こえず Eco*Ten 零点 

  10. Wework、ビッグモーター、WECARS さて問題です、グッドカンパニーはどれ?

  1. 政府、原発推進へ大転換 及び腰から本腰へ 本気度をEco*Ten 10点満点の3・5点

  2. キーエンス Eco*Ten は10点満点の6・5点 環境は身の丈に合わせて努力

  3. 経産省が国交省を行政指導する日は近い?! 企業の人権侵害の手引き公表

  4. 日揮 スシローなどとSAF生産、ESG・SDGsが背中を押した驚きの提携

  5. ディスコ Eco*Ten 10満点の8・0点 SDGsの総花的な贅肉を削ぎ、強い分野をより研磨する

  6. JFE 高炉から電炉へ 脱炭素の覚悟 過去の栄光と葛藤の末に Eco*Ten 6・5点

  7. ESGと経営戦略①マクセル が全固体電池の先駆に エネルギーのスマホ化を加速

  8. Eco*ユニコーン創生 株式上場益の2倍相当を無利子で10年融資、脱炭素のブレイクスルーへ

  9. 気候変動ランキング① CCPI 日本は59ケ国+EUのうち50位 政策の具体性と実現に低い評価

  10. ダボス会議 悲喜劇の舞台に形骸化、そろそろ賞味期限切れが迫っている

月別のアーカイブはこちら

カテゴリー

明治神宮外苑から信濃町へ

TOP