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国のジェネリック普及 効能は先発薬と同じでも、供給力と信頼はまだ後発のまま

 「ジェネリックというけれど、実際に使うまで必要ないろいろなことを考えると手間がかかり、割安じゃないんだよね」。もう10年以上も高血圧の治療でお世話になっている医師が選ばない理由を話し始めました。

「いろいろなことを考えると、割安じゃない」と医師

 健康保険組合から時々「あなたが使っている高血圧を下げる降圧剤をジェネリックに切り替えれば、こんなに薬代が低くなります」という試算が送られてきます。「どう考えれば良いのでしょう?」と尋ねた時です。真顔でジェネリックの不備について説明されると、長年命を預けてきたお医者さんだけに「やっぱりやめとこう」となってしまいました。

 国は毎年1兆円単位で増え続ける医療関連の費用を抑制するため、後発薬、いわゆるジェネリックへの切り替えを呼びかけています。健康保険組合の切り替え督促もその一環だと理解しています。先進国最悪の財政赤字を抱えている日本ですから、医療関連の費用節減は喫緊の課題と受け止めていますが、現場や薬局で「ジェネリックで良いですか」と問われた時、戸惑うのは私だけ?薬効や安全生を考え、自信を持って即答できる人はどのくらいいるのでしょうか。

薬の80%を占めるほど急増

 ジェネリックと呼ばれる後発薬は、特許切れの新薬と同じ有効成分で作られるので、効能や安全性は先発薬と同じとされています。新薬開発に投資していませんから、生産コストは低く薬価も安く抑えられます。政府が医療費抑制のために使用を推奨しているので、ジェネリックの使用はこの15年間で35%から80%まで急増したそうです。

 ジェネリックの効能は医薬品の専門家ではありませんので、医薬品メーカー、厚生労働省を信じるしかありません。ところが、本来なら最も信頼しなければいけないジェネリックを生産する医薬品メーカーの不祥事が止まりません。沢井製薬、日医工、小林化工。2020年以降、品質不正問題が相次いで発覚し、後発薬メーカーの業務停止命令などが続きます。予期しない生産停止が増えれば、国の推奨で急増している需要に追いつかず、ジェネリックの供給不安も続いています。病院や薬局で不足しており、注文の3割は断っているという見方もあります。

メーカーは中小企業がほとんど

 ジェネリックを生産する後発薬メーカーの産業構造が足かせになっています。後発薬メーカーは200社弱ありますが、中小企業がほとんど。各社が多くの薬を少しずつ生産する「多品種少量」型の経営を続けています。供給量を増やすため、経営規模を拡大しようにも買収や提携に必要な資金はなく、事業統合による生産増という結果を引き出すための経営ノウハウも不足しています。薬価は医療費を抑制するために改定のたび下落することもあって、生産増に投資した金額を回収できる収益を見込めるのか二の足を踏む企業もあります。

 厚生労働省も手をこまねているわけではありません。有識者検討会を開き、ジェネリックの生産体制の強化策をまとめました。5年程度の短期で結果を引き出すため、政府は金融・財政措置などで再編を後押しするそうです。

業界再編を促すが・・・

 もっとも、有識者検討会がまとめた改革案をみると、企業経営の基本を諭している内容で、かなりがっかり。例えば、生産効率を下げている多品種少量型の経営。ジェネリック1品あたりの生産量を増やすため、合併や買収、投資ファンドの仲介による事業統合などの業界再編を提案しています。中小企業が大半の業界に対し、合併・買収、事業統合を促しても、それを実現できる体力と経営判断を下せる企業がどれだけあるのでしょうか。不祥事を引き起こした品質管理の強化も同じです。改善に向けた自主点検の徹底、第三者の外部機関による監視体制なども提案し、法令を遵守する人材の育成が急務としています。不祥事がなくても企業が取り組まなければいけない経営課題です。本末転倒の見本です。

 結構、唖然とします。報告書から見えてくるのは、ジェネリック普及を優先するあまり、生産や品質管理に目が行き届かない医薬品メーカーが増えてしまった現状です。

普及を優先するあまり、矛盾も

 厚労省はすでにメーカー全てに対し法令遵守しているかどうかを自主点検するよう求めており、各社は10月までに社内のヒアリングを重ね、都道府県や厚労省に報告する予定です。厚労省は違反が疑われる工場には抜き打ちの立ち入り検査も行うとしていますが、おかしくありませんか。順序が逆転しています。医療費抑制を急ぎ、最も大事な供給と安全を見極めずにジェネリックを推奨。問題が噴出したのを機会に、供給と安全を改めて急いで取り繕う。国の姿勢、ジェネリック普及の実相に矛盾を覚えます。

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