思わず勘ぐりたくなります。保険会社と銀行は手持ちの顧客情報を互いに融通しているのではないか。銀行と保険という業種の壁があって情報は厳秘するが常識ですが、銀行も保険も顧客情報は最重要のビジネスツール。誰もがあり得ないと断言する勘違いとわかっているのですが、これだけ大規模に多発すると顧客が知らないネットワークが潜んでいるのではないかと勘ぐりたくなります。
顧客が知らないネットワークの存在?
なにしろ、この2、3年を振り返ってください。「ちょっと何してんの?」と言いたくなるほどの不祥事が続いています。もうだいぶ昔話のように感じますが、中古車販売最大手のビッグーモーターを思い出してください。2022年から2023年にかけて次々と不正行為が発覚し、中古車販売業界のみなならず大手の損害保険会社を巻き込む事件となりました。
悪質さには呆れるしかありません。自動車の修理時にゴルフボールでわざと損傷を拡大して保険金を水増し請求するなど手口はいろいろですが、片棒を担いでいたのが大手損害保険。 損害保険ジャパン、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険はビッグモーターに出向者を送り出し、事故車両の修理や紹介などで深い取引関係を構築していました。
不正請求が発覚した2022年夏に損害保険3社のうち東京海上と三井住友の2社は取引を中止しましたが、損保ジャパンは中止した後に一時再開。法律違反よりも自社の利益、成績を優先することに目がくらみました。2024年1月、損保ジャパンの白川儀一社長は辞任に追い込まれます。
損害保険4社は驚きの漏洩
2024年8月には大手損害保険4社が契約者の個人情報を大量に不正入手している不祥事が明らかになります。「やらかした」で済むレベルではありません。合計250万件。各社の社員が出向していた保険代理店で得た個人情報を本社へ流したり、自動車保険商品を取引するディーラーから情報を取得していました。
この4社は東京海上日動火災保険と損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険。7月に金融庁から保険業法と個人情報保護法に基づく報告徴求命令を受け、事実関係と原因、再発防止策を8月中に報告するよう求められていました。個別に件数を見ると、損保ジャパンが99万1000件、東京海上が、96万件、三井住友海上が、33万6300件、あいおいが21万7000件。業界トップ争いを演じる東京海上と損保ジャパンが突出した数字となっています。勝ち抜くすためには「やっちゃいけないことをやらなきゃいけない」というが社内常識なのでしょう。
やれやれと思ったら、今度は生命保険最大手の日本生命保険が登場します。損害保険と同様、出向先の銀行から得た内部情報を持ち出していたことが発覚しました。無断持ち出しは日生子会社のニッセイ・ウェルス生命保険。三井住友銀行とみずほ銀行に出向した社員9人が2019年4月〜25年4月までの期間、他の生命保険の商品情報などを含む資料943件の情報を無断で持ち出しました。このうち102件は親会社の日生と共有していたのですから、かなり悪質です。
日生もやっぱり持ち出していた
実は、親会社の日生でもすでに社員が出向先の金融機関7社から計600件の内部情報を無断で持ち出す不祥事が発覚しています。親も子も日生ファミリーが一体となって内部情報を無断持ち出しており、足し算すれば1543件。結構な数字です。
素朴な疑問が消えません。個人情報を持ち出された銀行は気づかなかったのか?顧客情報が流出すれば、顧客からの問い合わせ、あるいは出向してきた日生社員の動向などで「おかしい」と思う言動があるはず。万が一、目を瞑っていたらとしたら、言語道断ですが、銀行と保険の関係を考えれば「持ちつ持たれつ」だったのか?。
ひょっとしたら、「知らぬは顧客だけ」というのが実態かもしれません。
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