ESG・SDGsと企業経営

不二製油 違法な森林乱伐を監視、輸入原料のESGが企業の生命線に

 不二製油グループ本社は途上国の環境破壊を抑制するため、宇宙からの画像分析を使って森林などを違法に伐採していないかを監視する取り組みを始めます。途上国の経済は農業が基幹産業。輸出を増やす目的で森林を乱開発し増産する動きが止まらず、途上国の自然破壊が加速する原因の一つと批判されています。欧米や日本ではESGの観点からメーカー、製品を選ぶ傾向が広がっており、食品メーカーにとっても環境保護に対する姿勢そのものが最重要課題になってきました。

カカオ豆の70%はアフリカ産

 不二製油の主力事業の業務用チョコレートは原料であるカカオ豆を輸入に頼っていますが、世界の生産量の70%程度はコートジボアールやガーナなどアフリカ産が占めています。現地では生産を増やすために森林を乱開発する動きが加速しているほか、幼い児童を労働力として使う人権問題も指摘されています。

 森林の乱開発を監視するシステムは情報技術の専門企業と組み、コートジボワールやガーナなどの森林を対象に人工衛星の画像を解析。人工知能(AI)で農園の規模や二酸化炭素の排出量などを分析して、不法に森林を畑などに転換していないかをチェックします。

森林破壊、児童労働はゼロへ

 不二製油は経営計画で2025年までに ILO の定める「最悪の形態の児童労働(WFCL)」をゼロにするほか、農家の生活環境改善、森林破壊の防止と森林の保全などを明記。さらに2030年までにカカオ栽培地域に対して100万本を植樹する計画を掲げています。

 パーム油についても取り組みを明示しています。パーム油は東南アジアなどの熱帯地域に植生するアブラヤシから取れる油で、マレーシアとインドネシアから調達し、植物性油脂として使っています。他の植物性油脂と比べて加工しやすく生産効率が高いため、食品から化学品まで幅広く使われ、世界の植物性油脂原料で最も大量に生産されています。当然、乱開発による農園開発を招き、森林などの乱開発、強制労働・児童労働などの人権侵害も発生しています。

パーム油でもゼロをめざす

 不二製油は2016年3月に「責任あるパーム油調達方針」を示し、「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ(NDPE)」を明言し、「人々と地球環境を尊重するサプライヤーから責任ある方法で生産されたもの」を調達するとしています。「今後も、パーム油が持続可能な油脂原料として世界に受け入れられるよう、責任あるパーム油調達を推進していきます」と説明しています。

アボガドも環境破壊の象徴に

 日本は農産物の多くを輸入に頼っています。これまでも欧米と並んで大量調達による森林破壊の批判を浴びています。紙パルプ原料となる木材は1990年代からパプア・ニューギニアなどで日本の木材輸入ストップを求めるデモなどが続きました。世界的に需要が高まっているアボカド、パーム油なども違法な森林伐採、焼畑などが繰り返され、環境破壊の象徴になっています。

 とりわけアボカドは「グリーン・ゴールド」と呼ばれ、欧米、日本、中国などで消費ブームが広がっています。しかし、アボカド栽培には大量の水が必要になるため、環境を無視した畑の開発で周囲の水不足が深刻化し、さまざまな被害が発生しています。日頃、食べる輸入農産物をより美味しく食べるためにも、消費者も企業もESGの視線をより大事にするのが必須になってきました。

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