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三菱商事、ブラックロック、相次ぐ脱炭素ファンド、注目度は抜群 でも目利きは大事

 三菱商事が三菱UFJ銀行などとともに、脱炭素化につながる技術を持つスタートアップ企業などに投資します。投資規模は日本国内で最大規模となる10億ドル。その直後に世界最大の投資会社、米国のブラックロックも新しい投資商品を立ち上げ、東京証券取引所に上場すると発表しました。

元ブラックロックの専門家は警鐘

 脱炭素、ESGが冠に付くファンドや投資商品が相次ぎますが、基本設計は従来の投資と発想は同じ。将来性があると見込んで投資して成功する時もあるし、失敗もあります。ブラックロックで専門家として活躍していた担当者が退社後、ESG投資は効果がないという書籍を発表し、話題を巻いています。脱炭素、ESGに惑わされない目を磨きたい。

 三菱商事と三菱UFJ銀行、韓国の投資会社パビリオン・プライベート・エクティなどと組んで投資先を選定して運営します。投資の対象は、①水素や洋上風力発電などの再生可能エネルギー、②植物や廃油を原料とする代替燃料のSAF、③二酸化炭素を回収して地下深くに封じ込める「CCS」技術が主軸になりそうです。

 三菱商事・銀行、韓国企業の専門家が欧米を中心にしたスタートアップ企業を20社程度選別するようです。三菱商事は2030年度までに日本円で2兆円を投資する考えを明らかにしており、今回も投資計画の一部です。 ファンドですから、企業などから出資を募る形式になります。すでに計画する10億ドルのうち4億ドルが集まっているようです。すごい人気ですね。

 ブラックロックは日本法人のブラックロック・ジャパンが5月初め、「「iシェアーズ MSCIジャパン気候変動アクションETF」を東証に新規上場し、承認されたことを発表しました。ブラックロックもすでに気候変動、ESG関連の投資商品を上場、募集しており、順調に拡大しています。

世界で4200億ドル

 ブラックロックによると、世界で地球温暖化に対応するいわゆるサステイナブルなETFの資産残高は4200億ドルに達しており、とりわけ欧州は全体の約5割を占め、先行しています。日本はまだ話題先行の段階で欧米に比べて遅れています。

日本も政府、経団連が加速

 しかし、日本政府、経団連ともに2050年のカーボンニュートラルを掲げ、GX(グリーントランスフォーメーション)債などで巨額資金を調達して、民間に循環させる図式を描いています。エネルギー、鉄鋼、自動車などCO2の排出削減を迫られている産業だけでなく、さまざまな企業、産業で脱炭素の動きが加速するのは確実だけに、資金調達の多様化も広がるはずです。

 もちろん、投資はリスクとリターンが表裏一体です。ブラックロックは脱炭素に伴う経済全体の再構築とともに、新たな技術やビジネスモデルが創出される一方、投資リスクも想定しています。「移行から生じる投資機会を捉えリスクに対処するための投資手法を模索しているお客様に選択肢を提供する」と強調するのを忘れていません。

情報収集、勉強の努力は続く

 日本でも太陽光など再生エネルギーを謳い文句に資金を集め、被害が発生している事案が起こっています。三菱商事やブラックロックを同じレベルと並べる考えはサラサラありませんが、ESG・SDGs関連のイベントだけを見ても、カーボンニュートラルを掲げた投資商品を熱心に売り込む姿を見かけます。今後も大企業や投資会社が脱炭素のファンド、投資商品が続いて登場します。しっかり見極める目を養うためにも、情報収集には努力したいです。

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