ESG・SDGsと企業経営

金融庁がソニー生命に立入検査 生命保険会社はどう信頼を回復するのか 

 金融庁がソニー生命保険へ立入検査するそうです。ソニー生命の元営業社員4人が顧客14人から金銭を借り入れるなど不正な行為で合計1億2000万円を詐取していことが発覚しています。

 ソニー生命は現在、約280万人の契約者全員を対象に実態調査していますが、金融庁は立入検査によって営業現場や営業政策や人事管理などガバナンス(企業統治)を中心に詳しく調べ、業務改善命令や業務停止命令を含めたて行政処分する方向です。

元社員が31億円を詐取

 正直、ソニー生命保険の不正行為はかなり残念です。

 ここ数年、損害保険も含め保険会社の不正問題が続いており、もう呆れを通り越して慣れっこになっています。プルデンシャル生命保険で社員や元社員の計100人以上が総額31億円金を顧客から詐取した事件が発覚した時も、プルデンシャル生命の社内事情を以前から知っていましたから、「やっぱりね」と妙に納得していました。

 しかし、ソニー生命に対する見方は違いました。親会社のソニーを取材を通じて金融事業の成長過程を身近に感じていたこともあって、甘過ぎると言われるのは承知ですが他の保険会社とは異なる営業の道を切り拓くのではないかと期待していました。いや、期待というより信じたいという表現が正しいかもしれません。

盛田昭夫氏の思いはどこに

 ソニー生命の創業は1979年。ソニー創業者の盛田昭夫氏は米国の電機や自動車など有力メーカーが金融事業にも手を広げている実情も参考に、米国のプルデンシャル保険とソニー・プルデンシャル生命を設立しました。1981年営業を開始、1991年にソニー生命保険に社名を変更しました。

 営業政策は米プルデンシャル保険のノウハウを吸収しているわけですから、成果は営業担当者の個人技が決め手。社名を変更した1990年代に知人がソニー生命に転職した経緯もあって、社内事情を詳しく聞いたこともあります。

 知人は大手自動車メーカーのキャリアを活かして実直な営業を貫きます。元々、生真面目がスーツを着て歩いている人間でしたが、趣味の釣りを話題に次々と大口の顧客を獲得したようです。「夜飲むか」と誘うと焼き鳥などの居酒屋に向かうのが常でしたが、いつのまにかに「釣りに使うクルーザーを購入した」「マイカーはベンツに取り替えた」と金銭感覚が別人になっていったのは驚きました。

 それもソニー生命の実力主義、成果主義の反映。「大風呂敷を広げなくても、顧客と親身な関係を築けば成果は出てくる」と話す知人の言葉を信じていました。

信用ゼロからスタート

 他の生命保険会社の営業員と話しても、ソニー生命の話題になると嫌な顔をする瞬間がありました。日本の生命保険と異なるアプローチで顧客を増やす手法には「敵わない」と吐露する人もいました。

 ソニーグループは銀行業でもメガバンクと全く異なる顧客ファーストのネット銀行を成功させています。ソニー本体のエレクトロニクス事業が経営不振に陥った時には、金融事業の健闘がグループ全体を支えていました。

 しかし、落とし穴が待ち構えていました。事業規模が拡大すればするほど企業統治は難しくなります。多くの社員を抱え、業務内容は複雑多岐にわたります。会社の手足ともいえる営業現場で何が起こっているのかを察知、あるいは監視することが不可能になっていました。

 「信用を築くには時間がかかるが、失うのは一瞬」。昔、高校を中退した友人の部屋を訪れた時、壁に貼っていた短冊に書いていました。彼はパチンコに明け暮れ、若い女性のヒモとして生きていましたが、「この教えはいつも肝に念じている」。どの口が言うのかと笑い合いながらも、自分もこの人生訓だけは見習おうと思ったものです。

 ソニー生命の信用は失墜しました。ゼロからのスタートが待ち構えています。ヒモのように顧客から金を搾り取るのはやめて、真摯に生命保険を売るとは何かを考え、励みましょう。

最近の記事
Eco*Ten
  1. 紅麹で健康被害を引き起こした小林製薬 取締役をシャッフルすれば 経営責任もブルーレット?

  2. トヨタ、三菱ふそう、公取委の警鐘が聞こえない 下請法いじめ解消の鈍感さに呆れる  

  3. 缶チューハイが企業の倫理観を試す 利益に酔えない商品開発、マーケティング

  4. ドイツが脱原発を微調整、欧州のエネルギー危機、脱炭素の本気度を揺さぶる

  5. 日本製鉄 シアン流出の報告漏れ ESG経営の評価漏れもあぶり出す 

  6. 明治神宮外苑の再開発が問う 新たな蘇りか、あるいは100年の記憶の継承か消去か

  7. 「COP30は賞味期限切れ、パリ協定は消費期限切れ」で良いのか

  8. 100億匹のズワイガニが死滅 被害額は20兆円? 地球温暖化の衝撃は止まらない

  9. 「北尾吉孝」の素顔は?マネーで語る「力の論理」、金融機関の経営者の顔はどこに

  10. ESGと経営戦略①マクセル が全固体電池の先駆に エネルギーのスマホ化を加速

  1. Eco*ユニコーン創生 株式上場益の2倍相当を無利子で10年融資、脱炭素のブレイクスルーへ

  2. ディスコ Eco*Ten 10満点の8・0点 SDGsの総花的な贅肉を削ぎ、強い分野をより研磨する

  3. キーエンス Eco*Ten は10点満点の6・5点 環境は身の丈に合わせて努力

  4. 気候変動ランキング① CCPI 日本は59ケ国+EUのうち50位 政策の具体性と実現に低い評価

  5. 日揮 スシローなどとSAF生産、ESG・SDGsが背中を押した驚きの提携

  6. 政府、原発推進へ大転換 及び腰から本腰へ 本気度をEco*Ten 10点満点の3・5点

  7. JFE 高炉から電炉へ 脱炭素の覚悟 過去の栄光と葛藤の末に Eco*Ten 6・5点

  8. スズキEco*Ten(上)伸び代はいっぱいですが、実行と成果はこれから

  9. 経産省が国交省を行政指導する日は近い?! 企業の人権侵害の手引き公表

  10. ESGと経営戦略①マクセル が全固体電池の先駆に エネルギーのスマホ化を加速

TOP