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環境経営度 by AI ② 会計事務所は万能じゃ無い ニデック、プルデンシャル生命の失墜を見よ

 企業経営の分析は専門家である会計事務所に任せれば良い。ビジネスの世界の常識です。その信頼があるからこそ、株式上場企業の有価証券報告書など財務諸表の監査をする立場にあります。

 ですが、ここまでは公式見解。残念ながら、会計事務所は全権を保持する万能ではありません。何事にも表と裏があります。

PwCジャパンは2社の会計監査法人

 会計監査法人のPwCジャパンを事例にみてみます。世界4大会計事務所の一角を占め、プライスウォーターハウスクーパースの一員です。過去、取材などでとてもお世話になりましたが、偶然にも直近、結構な不祥事で注目を集めるニデックとプルデンシャル生命保険2社の会計監査を担当しています。

 ニデックは海外子会社の不適切会計をきっかけに巨額の損益隠しが発覚し、東証を代表する優良企業の座から転げ落ちました。2025年9月中間期決算は7月に1度、速報値を発表しましたが、その後に大幅に修正され、東証が定めた開示期限ギリギリの11月14日に公表した確定値には驚きました。

ニデックは決算を大幅修正

 売上高は前年同期比0・7%増の1兆3023億円、営業利益が82・5%減の211億円、純利益が58・6%減の311億円。7月の速報値は営業利益が878億円、純利益が548億円ですから、大幅な下方修正です。しかも、損失引当金876億円を計上。電気自動車(EV)駆動系「E-Axle」など車載用製品、家電、商業、産業など広い事業分野から発生した損失を新たに加えた結果です。株主じゃなくても「話が違うじゃ無い」と呆然とします。

 監査法人のPwCジャパンも不正に対する姿勢を明確にしています。2025年3月期決算の監査意見で「意見不表明」。2025年9月中間期についても同じ「意見不表明」。一連の不適切会計問題を巡る第三者委員会の調査が終わっておらず、結論の表明の基礎となる監査証拠が得られていないことなどが理由ですが、「意見不表明」が2度も続くのは異例中の異例です。

 ただ、素朴な疑問が残ります。PwCジャパンは不正を見抜けなかったのでしょうか。ニデックの不適切会計が突然、始まったとは思えません。もっと以前の決算監査の最中にニデックの経理担当者らが辻褄合わせした経営指標に嘘を感じ、過大に利益を増やした手法を見破る可能性はあった気がします。

 監査法人は数多くの企業を監査した百戦錬磨の会計士を抱えています。「おかしい」と疑問を持って過去を遡れば、、PwCジャパンなら不正行為を発見するチャンスがあったとはず。

プルデンシャルは顧客から31億円を詐取

 プルデンシャル生命保険はニデックと違い、100人超の社員が顧客から31億円を詐取する不祥事です。プルデンシャル生命が公表した調査結果によると、1991年以降498人の顧客に暗号資産(仮想通貨)などへの投資やもうけ話を持ちかけ、顧客から受け取った金銭を着服したり、借りても返さない事例がずらり。着服金額は30億8000万円で、このうち23億円近くは顧客に返金されていないそうです。一言で例えれば、「トクリュウ」顔負けの組織的な詐欺集団です。

 ニデックと違い不適切会計ではないので、監査法人の監査能力を疑うのはお門違いと思いますか。プルデンシャル生命の2024年度決算をもとにした報告書をみると、「愛をお預かりする、愛をお届けする。」と宣言した後、契約数、収益などの経営指標が続きます。S&Pの「A+」、格付け投資情報センターの「AA」という高い評価、健全な財務内容が誇示され、会計監査法人の項目ではPwCジャパンがしっかり明記されています。

 当然ですが、会計監査法人が顧客から31億円を詐取した疑いを臭わす経営指標は見当たりません。概況の中では、不祥事に対する経営の取り組みは明示しています。

一方で、金銭不祥事案と個人情報漏洩事案が相次いで発覚したことを受け、全容解明と被害拡大防止のため、2024年8月からすべてのお客さまへの事実・被害状況の確認を行い、また、再発防止に向けて、全社を挙げてリスク検証と改善策の検討を進めてきました。今後も引き続き、法令等遵守・ガバナンス強化を最優先に、社会的責任を果たすための体制を整えてまいります。

 プルデンシャル生命の現状を説明した概況は結局、虚偽でした。会計監査法人が営業担当者の不正を発見するヒントはゼロだったのか。経営側の「体制を整えてまいります」の文言をそのまま鵜呑みにしたのでしょうか。

 会計監査法人は監査する企業から手数料を受け取るのが主なビジネスモデルです。会計事務所の激しい競争もあって会計監査法人の言い値で通るわけがありません。契約継続を前提に値上げを見送って欲しいなど丁々発止の交渉が毎年、繰り返されます。逆に「これだけ高い手数料を支払っているのだから、このぐらい見逃して欲しい」と要求する企業もあります。

ビジネスモデルは監査手数料の収入

 ある会社の事例ですが、会計監査として見過ごせない事実があっても見逃すよう迫った結果、渋々認めた会計事務所がありました。ニデックやプルデンシャル生命でどのようなやり取りがあったのか不明です。邪推はしませんが、PwCジャパンは会計監査法人として監査企業とどのような交渉したのか興味があります。

 企業経営の実態を知ろうと思っても、会計事務所の報告書を丸ごと信用できない可能性があることを理解していただけたでしょうか。

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