ESG・SDGsと企業経営

下請けいじめが大幅改善 中小企業庁、公取委の二人三脚が大成功!

 やはり、公正取引委員会の役割は重要です。中小企業庁と連動するかのように下請け企業に対する優位的な立場を利用した不正取引を独占禁止法の違反すると摘発しています。

 背景には急務となっている中小企業の賃金引き上げがあります。大企業に比べ中小企業の賃上げが低いのは、発注する大企業が優位的な立場を利用して購入価格、支払い価格を不当に引き下げることがあります。従業員に対し賃上げしようにも、大企業から毟り取られれば収益率が低いまま。当然、賃上げ余力は低下します。

 公取委はここ数年、積極的に摘発しています。トヨタ自動車グループのデンソー、豊田自動織機製作所を例に見てみます。

 2022年12月。公正取引委員会は下請け企業との価格交渉で独占禁止法の「優越的地位の乱用」に該当する恐れがある13の企業・団体を公表しました。違反を認定しているわけではないものの、公表によって発注企業に警告を発し、下請けの中小企業の経営を改善させる意図でした。そのリストにデンソー、豊田自動織機製作所がありました。公取委は4030社に対しても注意するよう文書を送りました。

13社・団体は次の通り。

 デンソー、豊田自動織機、佐川急便、ドン・キホーテ、丸和運輸機関、三協立山、三菱食品、三菱電機ロジスティックス、日本アクセス、トランコム、大和物流、東急コミュニティー、全国農業協同組合連合会(JA全農)(順序不同)。

 デンソーはトヨタ系列を代表する日本最大であり、世界でもトップクラスの自動車部品メーカー。豊田自動織機はトヨタ自動車を生んだ祖業、源流です。この2社はトヨタそのものを体現しているといって良いほどです。トヨタ同様、収益力は群を抜いています。

トヨタは大変身

 公取委はトヨタ自動車こそ名指ししませんでしたが、デンソーと豊田自動織機の2社を「優越的地位の乱用」と公表することで「われわれは取引実態を詳細に把握しているのだ」とトヨタのみならず、アイシンなど系列大手に警告を発したと考えて良いでしょう。

 中小企業庁、公取委が発する警告はトヨタグループへ衝撃を与えています。

 中小企業庁が公表した2025年3月時点の調査でトヨタ自動車は価格交渉、価格転嫁、支払い状況いずれもアの評価です。豊田自動織機もトヨタと同じで、すべてアの評価。デンソーは価格交渉と支払い条件でア、価格転嫁でイ。

 驚いたのはトヨタグループ、そして取引が多い企業が軒並み、すべてアの評価を得ていることでした。トヨタ車体、トヨタ自動車東日本、豊田通商、豊通マシナリー、ジェイテクト、愛三工業、東海理化電機製作所、フタバ産業と有力系列企業がずらり。取引関係では日本碍子、日本特殊陶業。自動車メーカーでも資本関係があるSUBARU、いすゞ自動車、スズキ、日野自動車が続きます。

 トヨタグループの変身ぶり、手のひら返しを見るだけでも、中小企業庁、公取委の二人三脚が大きな効果を上げたことがわかります。これからも頑張ってください。

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