ESG・SDGsと企業経営

後発薬品だからって不正もゾロゾロは許されない 沢井製薬、日医工、小林化工

 1980年代、医薬品メーカーや医薬品卸を取材していると、「ゾロゾロ」という言葉を耳にしました。新人記者の頃です。「ゾロゾロって何ですか」と質問したら、後発専門の医薬品メーカーのことと教えてくれました。

後発薬品がゾロゾロと呼ばれた時代も

 新薬の開発は巨額投資と長い年月を要し、成功したら100億単位の利益を生みますが、失敗したら大きな損失に。これに対し、後発医薬品メーカーは新薬開発のリスクを回避して、先行して開発した医薬品の成果をなぞって生産しますから事実上リスクはゼロ。薬品の効能は先行した医薬品メーカーと変わりません。生産、販売それぞれコストは低く抑えられるメリットを享受できます。新薬の特許権が切れると、先行した医薬品の後を追うように多くの後発医薬品がゾロゾロと発売されるため、後発医薬品のことを「ゾロゾロ」と呼ぶそうです。現在は、政府が後発医薬品の使用を推奨しているぐらいですから、響きの良くない「ゾロゾロ」は「ジェネリック」と呼称が変わっています。

 ところが「ジェネリック医薬品」の不正がここ数年、ゾロゾロと相次いでいます。不正行為のゾロゾロは許されません。沢井製薬は2023年10月、胃炎・胃潰瘍向け医薬品で販売後に品質を確認する試験を国の承認を得ていない不正な方法で実施していたと発表しました。これまでに健康被害などは確認されていないとしていますが、会社ではこの工場で製造した薬の自主回収を進めています。

沢井製薬は不正な試験

 沢井製薬によると、販売後に効果や安全性が保たれているか確認するための試験でカプセルから薬の成分が溶け出す割合を調べる際、国の承認を得ていない不正な方法で試験していたそうです。試験する前にカプセルから中身を取り出し、劣化していない新しいカプセルに詰め替えていました。呆れます。今年4月に品質管理部門の担当者が代わったのをきっかけに発覚しました。

 不正は現場が上司の指示を誤解していたと説明しますが、不正のきっかけは2013年から。10年近い年月も継続したことが果たして現場の勝手な判断で済むのかどうか。品質検査という重要な工程を現場が勝手に誤解して継続することはあり得ないでしょう。経営管理の杜撰に驚きます。

日医工は相次ぐ自主回収

 ジェネリック医薬品の杜撰な経営管理は以前から指摘されていました。日医工は2021年3月3日、製造や品質管理で問題を指摘され、富山県から1カ月間の業務停止命令を受けています。2020年4月以降、製品の自主回収が相次いていました。不正発覚のきっかけは富山県が2020年2月に行った富山第一工場の抜き打ち査察。本来の手順として認められていない不正な対応が2011年から10年近く続けられてきたそうです。

小林化工は混入

 小林化工は2020年12月、経口抗真実菌薬で健康被害が発生し、使用停止と自主回収すると公表しました。生産工程で投入してはいけない睡眠導入剤が混入し、最終検査でも見落とされる致命的なミスです。服用した患者の中には死亡者も出ました。2023年4月に医薬品の製造と販売の許可が取り消されました。

 不正が相次ぐ背景には国の後発薬の普及を促す政策があります。ジェネリック医薬品は、先発医薬品に比べて薬価が安いため、普及すれば患者負担の軽減や医療保険財政の改善が期待できます。2005年に32%だったジェネリック医薬品の比率は、2021年には80%近くまで上昇しています。膨らみ続ける医療費を抑えるために、政府は後発品の使用を促進政策は功を奏したといえます。

政府の後押しで急成長し、人の命を忘れる

 政府の後押しによる追い風を受けて、ジェネリック医薬品各社は急速に企業規模を拡大しています。生産を拡大し、出荷量を増やせば、そのまま収益の拡大に直結する。急成長しながら、医薬品メーカーとして精緻でミスを許さない生産管理や経営管理を社内に徹底することは、やはり難しかったのでしょう。医薬品が人の命を救う商品であることを忘れ、お金を産み続ける粉に見えたのかもしれません。

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