前田建設工業。熊本県八代市の新庁舎建設をめぐる官製談合事件で再び登場しました。八代市庁舎建設は熊本地震で被災した復興プロジェクトで、総事業費100億円超 。人口10万人超の八代市にとってビッグプロジェクトです。
地方都市のビッグプロジェクトで発覚
2018年のリニア中央新幹線の談合の際にも「前田建設」を目撃していますが、過去多くの談合事件に関与し指名停止や行政処分を受けてきた歴史があります。
2000年代からみても、福島県の木戸ダム工事は福島県知事が辞職する大事件に発展し、創業家出身の前田又兵衛名誉会長が取締役を辞任しました。その後も新潟市、北海道で繰り返され、東日本大震災を巡る復興・復旧工事では前田建設とグループの前田道路は他のゼネコン、道路工事と共に公正取引委員会から排除措置命令と課徴金納付命令を出され、前田道路は127億円を支払っています。
企業として本気で談合一掃を考えているのか。これまでも前田建設は「捜査に協力する」と繰り返していますが、空虚に響くだけ。営業最前線で社員が勝手に犯した単なる個人の汚職と説明し、「トカゲのしっぽ切り」で終わらせるわけにいきません。ゼネコン業界に深く根付くDNA「談合体質」の深刻さを改めて痛感します。
今も「天の声」が存在
「ゼネコンのDNA」は今も健在と呆れたのは「天の声」の存在。昭和の時代、談合の摘発でたびたび聞いたフレーズですが、令和の2026年に発覚した八代市庁舎の復興で再び聞くとは思いもしませんでした。
今回逮捕された八代市議は「市議会のドン」 といわれ、副市長や市幹部に指示を徹底するよう命じ、市職員には「天の声」として伝わっています。談合のシナリオというか舞台回しは前田建設の社員。
前田建設を含むJV(共同企業体)に受注させるため、市幹部は入札基準を恣意的に変更し、特定業者を露骨に有利に進める。談合の構図は昭和も令和も変わっていません。この10年間を振り返ってみても、企業倫理、ESG、SDGs、コンプライアンスなど経営改革のキャッチフレーズが飛び交いましたが、なんの変哲もなく「地方の談合劇」が繰り返されます。
もちろん、ゼネコン各社は企業倫理の徹底を謳い、コンプライアンス・マニュアルを作成しています。外部の専門家から意見を取り入れ、談合が不法行為であることを社内の隅々にまで知らしめているでしょう。それでも、結局は巨額の公共事業が目の前に現れれば「天の声」が介入し、談合という汚れた手法が選ばれてしまう。
まさに、それは彼らのDNAに染み付いた「消すに消せない性質」なのでしょう。
企業改革はコンプラ重視
「ゼネコンのDNA」は一掃できるのでしょうか。まずは社員の業績査定を「売上至上主義」から「コンプライアンス連動型」へ改めることです。「いくら利益を上げたか」だけの評価では、不正をしてでも受注した者が評価されてしまいます。受注プロセスの透明性や法令遵守の姿勢を人事査定で高く評価するようにするしかありません。。
当然、談合や疑わしい行為に関与、または黙認した場合は、どれだけ利益を上げていても評価を最低ランクにし、役職剥奪などの厳しいペナルティを課します。逆に通報者の加点評価: 組織内の不正を早期に発見・報告した社員を、リスク回避に貢献したとしてポジティブに評価する仕組みを作ります。
地方自治体も改革
地方自治体も本腰を入れてほしい。市長や市議会など地方自治体の責任者がいくら談合一掃を宣言しても、市議らが率先して関与するのですからなんのありがたみはありません。
「天の声」や入札基準の恣意的な変更を防ぐには、決定に関わるすべてのブラックボックスをなくす必要があります。評価プロセスのリアルタイムで後悔するのです。 入札基準の作成理由、選定委員の議論の議事録(匿名ではなく実名、または発言者の属性を明記)をすべてWeb上で即時公開するのはどうでしょうか。
今流行りの人工知能(AI)を使い、過去のデータから「特定の業者に有利な条件」を自動検知するシステムを導入するのもグッドアイデア。外部の市民監査委員がいつでも入札プロセスを監視・検証できるプラットフォームを構築。通報窓口の外部委託と匿名性確保: 職員や業者が不正を察知した際、自治体内部ではなく完全に独立した第三者機関(弁護士や専門組織)へ直接、匿名で通報できるルートを義務づける、などなど。
もっとも、昔から「三つ子の魂、百までも」「言うは易し、行うは難し」「絵に描いた餅」のことざわが示す通り、ゼネコン、地方政治との談合が絶えることがないと諦めるのが「大人の対応」「世間の常識」なのかもしれません。「ゼネコンのDNA」は思ったよりも広く根深く生き続けている証拠です。
◆ 写真は久米設計のHPから引用しました。