ESG・SDGsと企業経営

プルデンシャル生命 強欲に自縛した企業DNAを改革できるか

 金融庁はプルデンシャル生命保険の社員が顧客から金銭を詐取していた問題で保険業法に基づく一部業務停止命令を出す方向で検討しています。保険の新規契約、販売を一定期間停止させ、内部管理体制の立て直しに専念させる必要があると判断しました。生命保険会社への業務停止命令は、2019年のかんぽ生命保険以来。プルデンシャル生命保険は変革できるのでしょうか。

企業のDNAは変わらない

 企業のDNAは時間とともに変わらないものです。DNAといえば難しいそうですが、ありていにいえば企業風土。その企業独自の文化や習慣が根付いています。プルデンシャルなど生命保険業界の企業のDNAは、保険商品を利用する顧客に対するサービス、社員教育、さらには規約やコンプライアンスに対する取り組みを通じて具体化され、その企業のアイデンティティとなります。

 例えば、プルデンシャルは日本生命などと違い、顧客のライフプランナーとしての役割を強化しています。顧客の人生に深く関与して生命保険製品を単に補償金の支払いで済ませず、いかに人生を支える力となるのかを提案し、ライバルを差別化しています。

 プルデンシャルは成果主義を軸にした給与体系を敷いていたため、営業員は過去の経験とアイデアをフルに活用して顧客に取り込みます。顧客も他社製品よりも大きな実益が得られるため、富裕層を中心に顧客層は広がっています。扱い金額が大きくなるだけに、優れた営業員はより多くの顧客を抱え、一億円を超える年収を手にするそうです。

 プルデンシャル生命の強さは本来なら経営陣の明確な指示とそれに従う社員の一体化で実現されます。しかし、最近、顧客から30億円以上も詐取した事件が発覚しました。営業を通じて顧客から得た信頼を悪用して不正な資金を詐取し、自らの利益を膨らましたのです。プルデンシャルが掲げた企業倫理を忘れ、みずからの強欲の赴くままに顧客を食い物にした結果です。

 営業員の不正行為は企業のDNAが試される瞬間です。長い歴史を持ち、多くの人材を抱えている大企業で不祥事ゼロを貫くことは不可能ですが、トップが迅速に行動し、内部調査を行うことで信頼性を保つことができるます。企業のコアバリューをいかに守り続けるかは、不正行為を乗り越えて顧客との信頼関係を再構築できるかにかかっています。

強欲との闘い

 しかし、強欲との闘いは簡単ではありません。企業倫理の重要性を研修などと繰り返し説いても、「どんな方法を使ってでも多額の年収が欲しい」という気持ちを否定することはできません。

 しかし、社員1人の不正行為は企業の信用を一気に壊滅させます。他の社員を守り、事業を継続し続けるためにも「企業倫理と強欲の闘い」を続けるしかありません。

 社員に対する教育や監督、マニュアルの整備など対策は多くありますが、やはり社内組織の透明性が最優先されます。言い換えれば、不正行為の予兆を感じる組織作りが求められるのです。顧客からの問い合わせに迅速に対応することも同じです。社内外で監視し合うというよりも、互いに信頼を維持する仕掛けを企業DNAに組み込むことです。

 プルデンシャルが経営改革で構築しなければいけないのは、社内外の情報を共有し、悪意や犯意を察したら、すぐに対策を講じる企業風土作りです。

月収30万円では物足りない

 プルデンシャル生命は不正行為を招いたのは、成果報酬を重視した給与体系が主因と考え、月収30万円を最低保証する給与体系を導入しました。一定の給与があれば、無謀な不正行為はしないだろうと判断したのでしょうが、正直いって多くの人にとって物足りないと感じらるはずです。

 なぜって、入社した人材は本来なら億単位、少なくても千万円単位の報酬を得られるかもしれない可能性を求めてプルデンシャルを選んでします。

「優秀な成績を収めれば、年収1億円も夢ではない」。プルデンシャル生命を縛る企業DNAは、強さでもあり、弱さでもありました。安定した収入を求めて入社する人間は少数で、言い方は不適切ですが一発千金に賭けてプルデンシャル生命を選んだはずです。

 プルデンシャル生命はこれからも強欲に縛られた企業DNAをどう解き放つか。試行錯誤が続きます。

最近の記事
Eco*Ten
  1. 山形大とサタケ コメで代替肉 需要開拓、農家経営に新たな栄養力に

  2. 朝日新聞の「次の時代」 企業記事は事業継承のため、メディアにとってのSDGsとは

  3. 気候変動ランキング③ 先進国が島嶼国などに「損失と被害」基金 中下位グループが大半を拠出することに

  4. 地域は過ちを発信できるか① 原発、運転延長・再稼働へ 水俣・足尾が教えること

  5. ESG・SDGsとマネー②バブル、それともグリーンウオッシュ

  6. 損保ジャパンのESG 言うは易し行うは難し ビッグモーターと共に隘路へ

  7. カーボンゼロを目指すJERAの不思議 新エネの旗手なのか、化石燃料の隠れ蓑なのか

  8. 公取委 ロピアに立入検査 商習慣と「下請けいじめ」を勘違いする流通業

  9. 環境経営度 by AI ③ 人工知能は企業を複眼、解析するリトマス試験紙

  10. デンソーEco*Ten(上) 実力は最強クラスでもトヨタへの忖度か、最前列に登場せず、残念!

  1. スズキEco*Ten(上)伸び代はいっぱいですが、実行と成果はこれから

  2. 日揮 スシローなどとSAF生産、ESG・SDGsが背中を押した驚きの提携

  3. キーエンス Eco*Ten は10点満点の6・5点 環境は身の丈に合わせて努力

  4. 政府、原発推進へ大転換 及び腰から本腰へ 本気度をEco*Ten 10点満点の3・5点

  5. 気候変動ランキング① CCPI 日本は59ケ国+EUのうち50位 政策の具体性と実現に低い評価

  6. ダボス会議 悲喜劇の舞台に形骸化、そろそろ賞味期限切れが迫っている

  7. JFE 高炉から電炉へ 脱炭素の覚悟 過去の栄光と葛藤の末に Eco*Ten 6・5点

  8. 経産省が国交省を行政指導する日は近い?! 企業の人権侵害の手引き公表

  9. Eco*ユニコーン創生 株式上場益の2倍相当を無利子で10年融資、脱炭素のブレイクスルーへ

  10. ディスコ Eco*Ten 10満点の8・0点 SDGsの総花的な贅肉を削ぎ、強い分野をより研磨する

TOP