企業

東電・柏崎刈羽原発 運転モラルでNO! 再稼働の道は険しいどころか

 東京電力の原子力発電所は再稼働できるのでしょうか。原子力規制委員会は5月17日、東電柏崎刈羽原子力発電所の運転禁止命令について解除を見送ることを決めました。再稼働に向けて改善要求した27項目のうち4項目で是正が不十分と判断したためです。4項目は傍目から見る限り、決して無理難題な要求とは思えません。しかし、東京電力にとっては原発監視体制を根本から再構築しなければ達成できないのかもしれません。電力不足やカーボンニュートラルへの対応で原発の再稼働を求める声が高まっていますが、その道のりは険しいどころか、とても無理という言葉が浮かんでしまいます。

テロ対策の是正ができないとは

 新潟県の柏崎刈羽原発は2021年1月、原発所員が他人のIDカードを使って中央制御室に入室した不正問題などが発生し、テロなど外部からの不正侵入を防止する体制が整っていないことが判明しました。規制委員会は2021年4月に運転禁止命令を出しました。

 規制委員会は改善に向けて会合を開き、東電に対し27項目を要求しました。このうち是正が不十分と判断したのは4項目。以下を参照ください。読売新聞5月18日付けの記事から引用しました。

◆侵入検知設備の誤作動の回数が十分に減っていない。

◆規制庁が指摘した改善事項について協力会社を含めた情報共有や協議が不十分

◆マニュアルの変更がルール通りに行われていないことがあった。

◆テロ対策に関する社員の意識や行動を保つ仕組みが構築されていない。

 求める4項目は無理難題か

 読んでみれば、率直な感想が湧くと思います。組織が通常、業務を円滑に遂行するためには不可欠な考え方を求められただけ。でも、実践できない。まして原発は、電気を生み出す産業・社会のインフラです。原子力という巨大なエネルギーを利用するメリットを手にする代わりに、原子力を安全に制御する運転・監視で絶対に落ち度があってはいけない巨大装置です。

 是正されていない4項目に共通することは、組織内のコミュニケーションがしっかりと確立されていないことです。福島第一原発事故でわかったのは、東電内で課題解決に向けて自由討議する空気がなかったこと。防潮堤の高さ、緊急時に原子炉を制御する給水ポンプなどは事故前から指摘されていました。しかし、電力会社の効率経営が最優先され、しかも経営トップに物申すなどは不可能な組織でした。

力の常識は社会の非常識かも

 規制委員会が指摘した4項目は、当たり前のことじゃないと思われがちですが、東電社内、協力企業にとっては難しく厚い壁のように映っているのでしょう。なにしろ電力会社は電力産業の頂点に立ち、巨額の関連投資、地域での影響力などを握っています。福島第一原発事故以前は、まさに地域の殿様。地域経済はもちろん、地方政治、国政にも影響を誇示していました。

 東日本大震災による事故で電力会社に対する監視の目はとても厳しくなりました。時には過剰ともいえる感情的な非難もありました。長年、親しくしていた東電幹部の一人は原発を集中立地した福島県に対する謝罪も含めて、東電を退社して移住して活動しています。東電も変わり始めていました・

日本にとっても不幸な事実

 しかし、柏崎刈羽原発では実践できないのです。言い換えれば現在の東電社内にはまだまだ福島第一原発事故の教訓が浸透せず、かつての東電が今も通用すると勘違いする空気が残っている。残念ですし、日本にとっても不幸な事実です。

 東電は、柏崎仮羽原発の7号機を2023年10月、6号機を25年4月に再稼働する予定でした。規制委員会の結論に対して「4項目について、しっかり是正を図りたい」とコメントしたそうです。

TOP