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日本生命 銀行情報を無断持ち出し 信用という保険を自ら貶め、捨てる

 なんとも恐ろしい不正行為です。日本生命から三菱UFJ銀行に出向していた社員が同行の内部情報を無断で持ち出す不正行為を調査した結果をみると、無断で取得した出向先の情報は7金融機関を数え、合計604件にも上りました。無断で持ち出した目的は「銀行の業績拡大、ひいては当社の業績拡大、出向者の定性的評価につながるとの期待があった」と説明したそうです。

日生はグループぐるみで不正行為

 さらに驚くのは、日生子会社からの出向者を通じても情報を無断取得していました。日生がグループ全体で一体と情報収集していたのです。子会社はニッセイ・ウェルス生命保険で、日生の完全子会社。2025年6月現在で、販売代理店を務める銀行や証券会社など6金融機関に計26人を出向させていました。出向者は商品の販売方針や販売実績に関する出向先の内部情報を許可なく持ち出し、営業部門で共有して利用していたという。

 情報が持ち出された金融機関は三井住友銀行とみずほ銀行。いずれも三菱UFJと並ぶメガバンク。この3メガバンクの情報をもとに営業をかければ、自身の足で稼ぐ営業情報よりも効率よく、契約できる可能性が高い顧客名簿が手に入ります。当然、ウェルス生命保険は無断取得した情報の一部を親会社の日生に提供していました。

 言うまでもなく金融機関は信用がビジネスの根幹です。個人や企業の財産を扱い、運用するわけですから顧客情報を厳密に管理するのは当たり前。新人教育の「基本のき」。それが見事に嘲笑うかのように個人情報を持ち出します。しかも、自社の情報ではなく出向先の金融機関の所有物です。

 出向は派遣先、受け入れ先が互いに信頼し合って人材を送り出しています。日生の不正行為をみると、まるで無断で持ち出す行為はあらかじめ互いに承知していたのではないかと勘違いするほど平然と行われていた印象すら受けます。

絵に描いた餅

 どの金融機関のHPでも良いですから、アクセスしてださい。事業の説明とともに、企業倫理の厳守、今風に表現すればESG、SDGsの堅持を強調しています。損保ジャパンなど大手が自動車保険で中古販売・修理会社の情報を新規契約の獲得に利用した滅茶苦茶な不正行為はまだ記憶に新しいですが、日生の不祥事を考えれば金融機関で個人情報の無断持ち出しは日常茶飯事なのではないかと思えていましまいます。

 経団連会長を送り出している日生がこんな体たらくでは、他の金融機関はどうなるのでしょうか。金融機関は信用を最重視し、企業倫理は厳守。絵に描いた餅とは日本の金融機関のことをいうのでしょう。

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