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損保ジャパンのESG 言うは易し行うは難し ビッグモーターと共に隘路へ

 損害保険ジャパンがビッグモーターによる保険金の不正請求問題で金融機関としての基本姿勢が問われそうです。東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険と共に出向者を送り出し、事故車両の修理や紹介などで深い取引関係を構築していましたが、不正請求が発覚した2022年夏に東京海上と三井住友の2社は取引を中止しています。ところが損保ジャパンは中止した後に一時再開していたことが判明しました。不正請求の全容はまだ明らかになっていませんが、不正請求が発覚した後も損保ジャパンがなぜ再開を決めたのか。法律に違反する違反しないにもかかわらず、ESGの観点からていねいな説明が求められます。

なぜ損保ジャパンは再開した

 ビッグモーターの不正請求問題は、大きな社会問題にもなっているので説明は省きします。前社長が記者会見で「なにも知らない」「ゴルフを愛する人への冒涜」などと発した言葉を思い起こすだけで、不正請求のみならず経営の根幹に関わる問題の深刻さがわかるはずです。車両修理業界に対する信用も傷つけ、打撃は「ゴルフ愛好者への冒涜」だけで済みません。

 不正請求の受け手である損害保険会社にも大きな影響が広がっています。損保ジャパンは東京海上、三井住友多くの出向者を送り出しており、ビッグモーターの業務内容には精通していたはずです。37人を出向させていた損保ジャパンは、出向者は不正を知らなかったとしていますが、外部の弁護士による事実関係の確認をするとも説明しています。金融庁は損保各社に対して保険業法に基づく報告を求める方針ですから、今後は不正請求発覚後の対応、そして発覚前の事実関係などが明らかになり、損保各社の説明も注目されるでしょう。

「サスティナビリティ」の先駆を自負

 法律に違反するのかどうかとは別に、金融機関としての基本姿勢は徹底的に検証される必要があります。損保ジャパンはホームペイジの「サスティナビリティ」の項目で以下の通り明記し、日本の保険会社として先駆の姿勢を自負しています。

 気候変動、人権、地域社会への配慮を自らの事業プロセスに取り込み、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)を考慮した投融資や保険引受に取組んでいます。
損保ジャパンは、2006年、国連の責任投資原則(PRI)立ち上げ時に日本の保険会社として初めて署名、SOMPOアセットマネジメントは2012年に署名しました。また、NZAOA(ネットゼロ・アセットオーナーズ・アライアンス)への加盟に伴い、2022年にSOMPOホールディングスとして署名を行いました。

 今回のビッグモーターにも関連するESGリスクの対応体制についても以下の通り、対処方法を具体的に明記しています。

 保険引受や投融資などの事業において重要性が高いと認識された事案については、グループCSuOを議長、各事業オーナー会社のサステナビリティ領域担当役員(CSO・CSuO等)をメンバーとした「グループサステナブル経営推進協議会」およびその下部組織において協議をしています。さらに、ステークホルダーからの情報収集や意見交換を通じて、事業プロセスにESGの要素を取り込むことで、ESGリスクへの対策を実施しています。

 以上のESGに関する会社の考え方に従えば、当然、他の大手がビジネスを中止したなかで損保ジャパンだけがなぜ一時再開する判断を下したのかを説明できるでしょうし、自ら説明しなければESGの理念を蔑ろにしたことになります。

一連托生で隘路に迷う?

 収益を重視し、ESGは多少目を瞑ったということはないでしょう。ビッグモーターは今後の経営の行方も注目されますが、損保ジャパンは共に経営姿勢が問われる隘路に入り込む恐れもあります。「社長は知りませんでした」と説明するビッグモーターと一蓮托生するとは思ってもいません。自らの企業姿勢を改めて実践する意味でも、積極的に考え方を開示するのが賢明だとわかっているはずですから。

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